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牢獄処刑人のcamusonのレビュー・感想・評価

牢獄処刑人(2013年製作の映画)
4.4
原題は「On the Job」とシンプル。邦題はちょっとゴテゴテですね。

実話に基づくクライムサスペンス。
裏組織が囚人をヒットマンとして雇うといった話。
当たり前のように警察は腐敗していて、管理は杜撰なので、
裏から手を回せば囚人を一時的にシャバに出すことなど造作もなく、
暗殺をさせてから再び刑務所に戻すと、
捜査対象にならずに疑われないという寸法です。

組織からすれば、バレづらいことよりも、
囚人という不自由な立場であるがゆえ、従順に仕事を執行し、
かつ、いざとなったら処分も簡単というのがメリットと思われ、
十分リアリティが感じられます。

これまでヒットマンとして仕事をこなしてきた初老の男は、釈放が近付き、
後継となる若い囚人とタッグを組んで、それこそOn the JOB トレーニングで、
仕事を伝授していきます。

一方、暗殺の捜査を行う警察側は、
長年昇進できない冴えないベテラン警官と若手イケメンエリート刑事のコンビ。
最初は敵対していたものの、協力して捜査を進めることになります。


暗殺者の老若コンビと警察の老若コンビが、それぞれに仕事を進め、
終盤に交錯して、山場を迎えるという展開です。


まず、脚本がすばらしい。無駄がなくスピード感に溢れているけれど、
各々の仕事だけでなく、私生活(特に家族との関係)もきちんと描いていて、
キャラクターに深み、複雑性が与えられています。

映像もなかなかのもので、
刑務所の中であったり、貧民街であったり、綺麗な素材ではないですが、
けっしてチープになることはなく、リアルな世界として迫ってきます。

同監督の過去作品「スパイダー・ボーイ ゴキブリンの逆襲(原題Gagamboy)」
においても、ギャグヒーローものの割には、
意外と絵作りにこだわりがあるなと思ってみていたのですが、
本作では才が遺憾なく発揮されていますね。


蛇足
エリート若手刑事役は、ガエル・ガルシア・ベルナル風のイケメン。
主要登場人物のほとんどが白人との混血なのはバランス的には少し残念か。
絵的に映えるので致し方ない面もありますが。

囚人が働いている様子がないと思い、ちょっと調べてみたのですが、
フィリピンには、外界から隔離するだけで、懲役のない刑務所が存在するそうです。
刑務所の中に店があったりするので、
看守に賄賂を送るのが常態化しているようですね。
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