千年女優

沈黙ーサイレンスーの千年女優のレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.5
崇高な志を持ってキリスト教布教活動を行っていた尊敬するフェレイラ神父の棄教を信じられず、自ら真偽を確かめようと島原の乱直後の日本へ訪れた若き宣教師のロドリゴとガルペ。目の当たりにした幕府の厳しい弾圧に神への信頼揺らぐ彼らがやがて沈黙に至る様を描く、遠藤周作の小説を原作にしたマーティン・スコセッシ監督作品です。

欧米のキリスト教のあり方と日本人の精神風土の乖離からその適合を考察し続けて、至った「弱者にとっての同伴者イエス」という遠藤周作の考えに感銘を受けたマーティン・スコセッシが、数十年の構想を経て制作した作品で、全編に渡って自然音のみで構成され、残虐描写も厭わない徹底したリアリズムを追求しつくした真に迫る一作です。

キリストは激しい弾圧の中にあっても命を賭して信じるものを貫きましたが、では誰もがそれに習わなければいけないのか、生きるための思想で死ぬという矛盾をどう解決するのか。「譲れることと譲れないこと、そして譲っちゃいけないことがある」とかつて長渕剛は歌いましたが、それは人生論や政治論に通じる普遍的な命題でもあります。
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