あいのべる

沈黙ーサイレンスーのあいのべるのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.3
鑑賞日 2021/07/13

日本人としての立場からこの映画を見られることはとてもラッキーなことだと思う。日本史を学ぶ上で、この映画と同じテーマである「隠れキリシタン」は避けては通れない内容だ。

(※ここからネタバレ注意※)

幕府による残忍な行為と、それを嘆くポルトガル人たちの姿が印象に残った。日本のキリシタンが踏み絵を踏むだけでは許されず、司教が信仰を捨てなければ殺されてしまう。海に投げ入れられたキリシタンたちを必死でもがいて救おうとするシーンは、とても辛いものだった。
司教たちのそれぞれの最後は全くもって別々のもので、その観点は言葉だけでなく映像、演者の表情として映し出されている。見ている側から彼らにとってのキリストと日本のつながりは一体何だったのか考えさせられるばかり。
一番良かったシーンは、主人公ロドリゴが踏み絵を踏むときに問いかけてくるキリストの言葉と、彼の表情を映すシークエンス。あれは極限状態だから頭に浮かびあがったものではなく、彼にとっての新たな考え方の誕生であったに違いない。とても、とても美しかった。

高校の授業で学んだ、島原の乱は特に私に強い印象を残した。3万7千人ものキリシタンが蜂起したこの反乱では、内通者一人を除いて老若男女問わず全員が殺されたそうだ。見せしめなのか、最後のひとりまでが抵抗したのだろうか。もし後者であるとするならば、それほどの信仰心に固い人々であったということが分かる。鎖国後ということもあり、この出来事を受けて背教者たちはどう感じ取ったのだろうか。時系列的に見れば、ロドリゴの背教よりも後の出来事である。

スコセッシ監督はこの映画を作成するのに、約30年もの時間を要したらしい、一度見るだけでは気付けないこともたくさんあるだろう。記憶が薄れたころに再鑑賞したい。
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