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沈黙ーサイレンスーのcookieのネタバレレビュー・内容・結末

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

高校時代に読んだ原作の印象が強烈で、GYAO!の無料期間中にキャストもチェックしないまま鑑賞。
公開当時に観ていたら、外国人俳優は一人もわからなかった。

始めは踏み絵が苦渋の選択だったキチジロー(窪塚洋介)だが、最後の方はまるでハエがチョンと片足で触れるくらいに簡単にやってのけ、裏切りと告解(カトリック信者が罪を告白し赦しを得ること)を繰り返す。ちっぽけで卑しいその様を、弱い人間の象徴として滑稽に映している。
そんな軽蔑すべき存在のキチジローと対比させながら、宣教師ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)の葛藤をじっくりと描いている。

棄教しない庶民を時間をかけてじわじわと死に至らしめ、それを見届けさせる残酷さ。
モキチ役は監督としてしか知らなかった塚本晋也。記憶に残る演技だった。

真の棄教を強要したのではなく、あくまでも求めたのは「形だけ」。奉行の井上(個性が光っていたイッセー尾形)や通辞(浅野忠信)は元信者。
なぜ禁教令が出されたか(宣教師の悪行も起因?)、なぜオランダは貿易が出来ていたか など、忘れていた日本の歴史を後でもう一度振り返った。

宗教に対して常々自分の中でモヤモヤとしていることが提示されている。
✔信仰心がありながら、なぜ犯罪・不倫など教えに背くことをしてしまうのか
✔懺悔しさえすれば赦されるのか
✔死後の世界に夢を持たせるのはズルくないか

踏み絵をする者をあと二人出さなくてはならないとなった時は「若い人を犠牲にするより、いっそ私が行った方が...」と自分に置き換えてしまって胸が苦しく、ロドリゴ目線で「(信仰とともにある)自分を守るために死ぬか、生き恥を晒しても信者たちを守り生かすか」と悩み、観ている間中とても辛かった。
答えは見る側に委ねられ、鑑賞後もずっと頭に残る。

善悪や正邪は必ずしも白黒はっきりつけられるものではない。その狭間で悩み抜く姿に神は常に寄り添っていて、どちらを選ぼうとも伴った苦しみを知る神は赦し、受け入れる。
そこには特に弱者(教えに反する者)への深い慈しみが感じられた。

キチジローだけは、最後までロドリゴに「パードレ!」と以前と変わらぬ眼差しを向けていた。
荼毘に付されるロドリゴの映し方が印象的だった。

司祭になりたいと思っていたほど信心深いカトリック教徒で、何度か離婚を経験しているスコセッシ監督が、映画化に強い思い入れがあったのもうなずける。
日本人から見てもとても丁寧に作られていた。

ロドリゴのモデルとなったジュゼッペ・キアラ神父の墓碑が残されており、調布市の有形文化財(歴史資料)に指定されているという。
https://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1505883028906/index.html

【notes】
●音楽を使わず自然音のみ
●日本語英語
●ロケ地は台湾🇹🇼
●パードレ(神父)、パライソ(パラダイス)
●宗教と政治はセット
●余談:
・キリストの人物像(今まで知らなかったネガティブな情報の真偽は?)
・島原の乱にたった一人の生存者(山田右衛門作)
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