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沈黙ーサイレンスーのYASUUのネタバレレビュー・内容・結末

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

原作は1966年に発表された遠藤周作著作『沈黙』。
学生時代に遠藤周作作品に熱中した時期があって、原作は読みました。
遠藤周作作品は『沈黙』『海と毒薬』『死海のほとり』などの純文学作品と『おバカさん』『さらば、夏の光よ』『わたしが、棄てた、おんな』などの中間小説があり、僕は両方とも好んで読んでいました。
カソリック系のクリスチャンであった氏の作品は、作品の根底に神の愛があり、純文学、中間小説ともに読後は心の底に響くものがありました。
僕は学生時代にキリスト教の教えに深く関わったこともあり、氏の文学にはかなり共感しました。

『沈黙』は江戸時代初期に日本に布教のために訪れた宣教師を主人公にした物語です。
当時は幕府の禁教令でキリシタンの弾圧が激しくなり、抵抗した農民が島原の乱を起こしたころ。
高名な宣教師フェレイラ(リーアム・ニーソン演)が日本で棄教したという知らせがローマに届き、その弟子であるセバスチャン・ロドリゴ神父(アンドリュー・ガーフィールド演)とフランシス・ガルペ神父(アダム・ドライヴァー演)が真相を探るべく、密かに日本へ渡りますが、長崎奉行・井上筑後守に捕らえられ、地獄のような拷問を受けてしまうのです。

本作の中心となる人物はロドリゴ神父なのですが、彼に対しての拷問は少なく、彼の目の前で信徒たちが激しい拷問を受けるのです。
奉行たちは宣教師が死ぬことで、神格化し、却って信仰を深めてしまうことがわかり、
殺すのではなく、棄教させて、信徒たちを失望させることを目的にしていたようです。
拷問シーンは史実に忠実に再現され、かなりエグいシーンが映し出されます。
ここらあたりは流石マーティン・スコセッシ監督。原作を熱愛しているだけあって、ぬかりはありません。
加瀬亮演じる信徒シュアンの首は吹っ飛び、今や人気沸騰の美少女・小松菜奈演じる信徒モニカはむしろに巻かれ海の底に沈んでいく。
人気俳優といえども容赦はありません。

信徒が拷問で死んでいく姿を見ながら、ロドリゴ神父は叫びます。
なぜ神は彼らを見殺しにするのか?
なぜ沈黙したままなのか?
本作のタイトルである『沈黙』はこのことを表しているのです。

様々な拷問を目の当たりにしたあと、探していたフェレイラと会い、彼の助言もあり、ロドリゴ神父はついに棄教してしまいます。
フェレイラはロドリゴに、自分たちの宗教は日本には浸透しないと告げます。
日本人は神を大日(太陽)と呼び、彼らは自分たちの宗教を日本特有の自然崇拝へと変化させてしまったと。

キリスト教は偶像崇拝を禁止していると思いますが、
踏み絵は神の子であるキリストの偶像を踏むことで、偶像を踏むことは抵抗がないはずだと思うのですが、当時の信徒たちは日本特有の信仰を持っていたのでしょうか。

フェレイラもロドリゴも(当時の)日本にはキリスト教が根付かないことを感じ、棄教に至ったのかもしれません。

遠藤周作作品にはキリスト教に対する信徒ならではの疑問がテーマになっています。
本作を観て、興味を持ったなら、ぜひ読んでみてください。
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