通りすがりのアランスミシー

沈黙ーサイレンスーの通りすがりのアランスミシーのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.5
グレアム・グリーンをして「20世紀のキリスト教文学で最も重要な作家である」と言わしめた遠藤周作の代表作『沈黙』
その二度目の映画化にして大巨匠スコセッシの念願の企画。
前作の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」が被写体もカメラもぐりんぐりん動き、手練手管の限りを尽くした編集テクニックで観客をマヒさせる「動」の映画だったのに対して本作は徹底的に禁欲的。
動きは少なくBGMもほとんど使われず、静謐な空間に自然音が響く文芸の匂いたっぷりの仕上がりになっている。
内容については原作の核心を良くついていると思うし、原作には出てこない通辞の言葉が多神教と一神教の壁を端的に表している。
カトリックの司祭を目指していたスコセッシがキリスト教信仰をここまで冷静に見ていることに、この巨匠の凄さを改めて思い知らされる。
長いしテンポも悪い、決して愉快な映画ではないが長さにもテンポの悪さにも意味のあるよく出来た映画。