maya

沈黙ーサイレンスーのmayaのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.7
スコセッシが「沈黙」を撮ってくれて本当に良かった...
「宗教活動」というものをとても引いた目で、人間の活動として描いている。
日本人サイドの英語の使い方が階級によって全く違うのも良かった。確かにみんな英語喋れすぎでは?とは思ったけど、かえってその「喋り方」の違いが、如実に「欧米人が思う日本人のカタコト英語」の先入観を崩してきて堪らなかった。役人側がすごく丁寧で洗練された英語で交渉をしてくる点、「迫害者は文化的で進んだ文明を持った人々である」という事実が感じられ、却ってものすごく絶望的。特に浅野忠信がすごくいい味出してて、恐らくパードレ以上に博学で頭が良い。映画中盤の彼の登場シーンの会話で、はじめて「布教側ではない、文化的な人間の視点」が加わって、突然布教側の傲慢さ、無知さが見えてしまう。
キチジロー素晴らしいですね。最初は「ユダ」、それから「荒れ野の誘惑の悪魔」と姿をかえて、最後は「互いを赦し合う人間」になる。ビジュアルの変化の仕方も最高でした。
そしてスコセッシ映画にでてくる「妻」は最高って決まっているのです。たったの1シーンなのに、ものすごい強かさと愛を感じた。彼女は別にクリスチャンではなかったのだろうが、夫の心にきちんと気がついていたのだ。
「この土地には、何も根付かない」というセリフ、スコセッシは本当に勘の鋭い人なんだな、と感じる。「サムライ」「カタナ」に目が眩む外国人が多い中、日本という国の奥底の核の部分を、こんなに見事に取り出して見せた外国人監督、ほかに見たことない。そしてその核は歴史からではなく、恐らく現代日本から取り出されたものなんじゃないだろうか。だってスコセッシ映画はいつでも、ドキュメンタリーを反映しているのだ。
maya

maya