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ザ・テノール 真実の物語のKUBOのレビュー・感想・評価

ザ・テノール 真実の物語(2014年製作の映画)
4.0
今日は韓国文化院で「ザ・テノール 真実の物語」の特別上映会に行ってきました。

私はエンドロールでこの作品が「実話に基づいて作られている」という事がわかってから、ガラッと受け止め方が変わりました。全く前情報なしで見ていたら、あまりに物語の振幅が大きく出来すぎていて、よくある大げさな韓国風映画と勘違いしていたのです。これが全て真実だったとは…。

天才テノール歌手チェチョルは飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、甲状腺癌の手術の際に声帯を傷つけ歌が歌えなくなってしまう。彼の友人の沢田(伊勢谷友介)はチェチョルの声を取り戻すべく、声帯手術の世界的権威、日本の一色博士に手術を依頼する。チェチョルの声は戻るのか?

エンドロールが終わると舞台上にスポットライトが当たり、ひとりの歌手が映画の中でも歌われていた「アメイジング・グレイス」を歌い出す。背筋がゾクッとした。そうベー・チェチョル本人なのだ! この物語の元になったベー・チェチョル本人が登壇し、生の歌声を聴かせてくれたのだ。万雷の拍手の後、伊勢谷友介が演じたチェチョルの親友沢田のご本人と実際にチェチョルを手術した一色博士も登壇しての豪華なトークショーとなった。

特に心に残った話があった。日韓の友好のために作った映画だが、韓国では6分間カットされた部分があった。全て日本人がチェチョルのために奔走しているシーンだと言う。最初は相当頭にきたけれど、彼らも切りたくて切った訳ではないことに気がついた、と。カットしないと「親日」と言われて映画そのものがかからなくなってしまうからだと。それでも、なぜそこまで「親日」であることを責めるのかとも考えたが、それは韓国人がそこまで傷つけられたのだと。そこまで考えて、それでも日本人が全力で守ったチェチョルの声が光復節で韓国国歌を歌ったことが、私たちの友情が日韓友好の架け橋になれば、と。

上映後のトークショーでこんなに感動したことはない。御本人たちのお話も含めて、素晴らしい映画であった。トークショーの最後に再びチェチョル氏が「Time to say goodbye」を熱唱。会場は鳴り止まない拍手に包まれた。毎日映画は見てるけど、忘れられない日になった。
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