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最後の命のhayatoのレビュー・感想・評価

最後の命(2014年製作の映画)
3.7
元々中村文則の原作小説が好きで、映画化されていると知り鑑賞した。

原作のどんよりと暗く、重い純文学の世界観が映像でもしっかりと再現されていて、主演の柳楽優弥を始め、この物語の核となる主人公の親友「冴木」を演じた矢野聖人などの役者陣の演技がとにかく凄かった。

幼少の頃、仲が良くいつも遊び相手になってくれたホームレスたちが、強姦をしている現場を目撃してしまったことで、運命が狂った二人の人物を、柳楽優弥と矢野聖人がそれぞれ対照的に演じていて、「性」や「死」、そしてタイトルにもある「命」というものの重さについて、とても考えさせられる作品だった。

中村文則の作品はどれも暗く、人間の暗部や絶対的な世界の不条理など、時に目を背けたくなるような残酷な題材を扱っていることが殆どだ。そのため好き嫌いが極端に分かれる作家と言ってもいいと思う。
だけど、自分はそんな、暗い中にも微かな希望や光を見出してくれる、人の心を小さく照らしてくれるような中村文則の作品が心から好きで、いつも救われている。

人を選ぶ作品ではあるし、声を大にしておすすめとは言えないが、こういう作品が世の中にあるというだけでも救われる人は少なからずいると思う。


「俺も一緒に、狂おうかと思うんだ。
一人で狂うのは嫌だろう?」
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