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最後の命のrissaのレビュー・感想・評価

最後の命(2014年製作の映画)
4.6
きっと人間は必ず心の中に悪や狂気を潜めていて、それは嫉妬だとか羨望だとか、そういう表面的な言動に表れやすい感情よりもずっとずっと奥底に沈まっている心理なんだと思う。
それが例えどんなに穏やかな人間であっても
貧富の差も根暗も根明も関係なしに
眠ってるだけで、みんな悪人の要素は持ってる

けどその悪がどんな瞬間にどんな形で表面化するかは自分にも周りの誰にも分からなくて、予期せぬ瞬間に自らの悪に気がついてしまったら、そこからはもう「正しさ」を理屈では分かっても、気持ちがついていかなくなるんだと思う。

ホームレスの強姦事件を目撃した幼馴染2人が、両極端の形で性と生に対して苦悩を抱えたまま大人になっていくお話
1人は、事件以来、性への恐怖心を拭えないまま人に触れられることさえ怖くて閉鎖的に生きていくようになる人、もう1人は、事件後も表面上は明るく健気に育って、だけど明るい顔の裏では事件以来自分の悪(=強姦に対する興奮)に目覚めてしまって、その性癖に囚われて生きることになる人

罪を犯すのを止められなくなった自分を、ブレーキをかけたいのにかけられないほどの性的衝動の中で苦しみながら生かしていかなくてはならない冴木の生き様が観ていて苦しすぎた

世の中には特殊な性癖を持って、それを罪としてしまう人が沢山いる
例えば、
小学生の男子を犯して性的興奮する先生
動物を虐殺することで性的興奮する少年
そして強姦魔

そういう人、ニュースでたくさん見るけれど、ニュースになってないだけで世の中に溢れ返ってるけれど、誰もそんな人間になりたくてそう生まれてきたわけじゃない。きっとみんなある時ハッと目覚めて、その悪がたまたま罪に繋がるものだったってこと。
悪の衝動は罪に近付けば近付くほど自力で抑え込むことが出来なくなると思う。
だから連続強姦をしながら、それに悦びを感じながら、その反面で「真っ当な人間の心を持つ自分」がその自分にたまらなく憎悪を抱いて、
でもそれでも心の底では「我を忘れて悪に染まりきれたらどれだけ楽か」と考えながらもがく人生

罪を犯す人間を擁護する気は全くないけれど、そんな人生って、どれだけ苦しいかな
罪を犯すことを止められない苦悩を抱える冴木を悪人だと端的に呼び切ってしまうのはあまりにも残酷すぎると思った

あの事件さえなければ、目覚める事はなかった悪かもしれないのに。

きっと、どんなに生きるのが苦しくても、生も、性も、嫌でも付いてくるもので、自分の意思じゃ投げ捨てられないもの。
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