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ソング・トゥ・ソングのmegurosのレビュー・感想・評価

ソング・トゥ・ソング(2017年製作の映画)
3.6
テレンス・マリックのファーストカットが8時間もあり、2時間に収めるためにベネチオ・デルトロ、クリスチャン・ベール、ヘイリー・ベネットらが完全に姿を消してしまった...ということで公開前から話題だった作品(それでも超豪華キャスト)。

その2時間は、音楽業界の美男美女(ライアン・ゴズリング, ルーニー・マーラ, マイケル・ファスベンダー)のくっ付いたり離れたりを軸に、その周辺の関わりがある人たちのエピソードも含めた構成に。愛や自由を求め、自分とは何者かを探しもがいた人生の断片や瞬間がつなぎ合わされることで、何か人間の真理に迫らんとするという実にテレンス・マリック的な内容。

しかし、結局は”大切な人を大事にすること=自分を大事にすることにもなる”みたいなシンプルな真理に辿り着くため、またその美男美女たちがジェットセッターの刺激中毒者のようなコロナ前の価値観に生きていることもあり、2021年現在に生きる自分には少し古くさく見えてしまった。

本作にはナタリー・ポートマンも出演。ルベツキの撮る美しい映像にモノローグが重ねられ、まるでシャネルのCMを延々と2時間ほど観させられている気持ちになる。ただ、ナタリー・ポートマンは街のウェイトレスとして登場。ガールネクストドア感を醸していてこれはむしろ尊い。

このナタリー・ポートマンを追い込む悪い男クックは”全てを持っていて、何も持っていない”という特権階級にある自己破壊的ないつものファスベンダーっぽい役柄で、ハチミツに漬けたマジックマッシュルームを食べたり、ナタリーにルーニー・マーラも交えたthreesomeを完遂したり、一般庶民には想像しづらい悩みを抱えているのだが、どこか既視感があったようにも思う。

ライアン・ゴズリングがルーニー・マーラの腕を綺麗に洗うシーンが2度ほど出てくるが、現場はアドリブだったと聞くので、まあそういうことなのだろう。
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