佐藤克巳

その夜の妻の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

その夜の妻(1930年製作の映画)
5.0
「非常線の女」と並ぶハリウッドダンディズム満点の小津安二郎監督の犯罪アクション映画の傑作。映画の看板描き夫岡田時彦は、ベッドで病に臥せる娘市村美津子の医療費金策の果てにビジネス街で拳銃強盗するが、素早い警察の捜査網に追い詰められた。そこへ円タクがやって来て、妻八雲恵美子の待つアパートに辿り着き娘に再会、そこにドアのノック音。カーテン越しに身を隠し妻がドアを開くと、あの運転手が刑事山本冬郷だった。妻はベッドに隠した拳銃で刑事を監視、夫は娘の看病に当るが、妻が眠気に誘われ形勢逆転。朝になり、娘は回復し妻は一安心すると、刑事が居眠りその隙に夫を逃すと、刑事は毅然と立っていた。追跡しようとドアを開けると帽子を斜に構えた夫が観念して自首した。岡田は、佐野周二の甘さと鶴田浩二の刹那さに沢田研二のカッコ良さを併せ持つ飛び切りのスターだったし、山本のハリウッド帰りのダンディさに加え八雲の美しさが花を添えた。
佐藤克巳

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