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オオカミは嘘をつくのnetfilmsのレビュー・感想・評価

オオカミは嘘をつく(2013年製作の映画)
3.6
 赤い靴を履いた少女がかくれんぼ中に忽然と消えた。まるで神隠しにあったような突然の出来事のあと、少女は惨殺死体となって発見される。レイプ痕と共に少女の死体は無残にも首が切られて発見される。イスラエルの警察はこの陰惨な事件に少しでも早くカタをつけようと部下たちに発破を掛けるのだが、中には違法な捜査に手を染める者もいる。刑事のミッキ(リオル・アシュケナージ)は当初から1人の男に犯人を絞り、彼を執拗に追い詰めた。教師のドロール(ロテム・ケイナン)は虫も殺せないようなひ弱な男に見えるが、警察は彼をクロと断定する確信があるようでその自白のさせ方、供述の取り方は違法スレスレで世界のスタンダードに照らせば完璧にアウトだ。携帯を持つ現代人にとって映像はすぐに隠し撮りされ、不特定多数が閲覧できるメディアにアップされる。やがて暴力的な取り立てをしたミッキは刑事課から交通課に転属させられるが、彼の刑事としての執念が昼も夜もなく一般人であるドロールを追い詰めていく。そこには同じような年ごろの娘を持つ男の正義感と使命感があった。

 映画はいわゆる90年代の猟奇サスペンスのような体裁を取るが、どちらかと言えば脚本は洗練されておらず、捜査がいったいドロールのどのような行動をクロと断定する理由とするのかがイマイチわからない。だがミッキの刑事としての確信や匂いは彼が本部を無視してただ一人暴走するには十分で、優秀ではあるが上司には睨まれる独断の人であるのだ。だが追う側と追われる側の二項対立で話が進むのかと思われた矢先、突如横軸から別の人間がドロールの自白を手伝おうと声を掛けてくる。当初は地下室のある山小屋を借りたギディ(ツァヒ・グラッド)こそが真犯人ではないかと読んだが、どうやらそうではないらしい。映画は1人の刑事を挟み、被害者家族と加害者と疑われる容疑者を通して物語が進んで行くのだが、ここにイスラエルという国の前時代的な捜査体制の不備が見え隠れるするのだ。ここでのドロールの捜査にはどこにも正当性はない。本来なら被害者の父ギディを止めねばならない刑事のミッキはあろうことか拷問に加担し、被害者遺族もまた簡単に口を割らない容疑者の態度に憤り、拷問がどんどんエスカレートしていくのだ。ドロールをクロとする男たちの歪んだ正義感は凶器を宿しながら男たちに伝播して行く。いったい何が公平な正義感がわからぬまま、物語は暴走を繰り返しやがて一つの驚愕の結論に達するのだ。その結末には開いた口が塞がらなかった。
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