紫のみなと

白い帽子の女の紫のみなとのレビュー・感想・評価

白い帽子の女(2015年製作の映画)
3.0
昔、はじめてこの映画を観た時にナニコレ⁇と思った記憶があります。

数年ぶりに観るともなく見始めたら、冒頭流れる主題歌がジェーン・バーキンの「ジェーン・b」で。そういえば初見の時もなんでこの選曲?と思いましたが、映画の内容知った立場で考えてみると、1人の女を歌った唄と、本作に登場する1人の女=アンジェリーナ・ジョリーの存在を共鳴させたかったのかな?とも思いましたが、やっぱり映画と合ってない、変な選曲。

ラストのオチを見るにつけ、やはり、この主題を撮りたかったのであれば、監督アンジェリーナ・ジョリーは主演女優を自分以外にするべきだったと思います。
ブラット・ピットは(単に個人的にファンだからもありますが)、なんだかんだ一途な夫の切ない表情がいいし、ハサミでちょび髭を揃える仕草なんかもいい。まあ小説家には見えませんが、カフェの主人との人間的なやり取りなどは充分見応えあっていい映画の要素として画面を彩っている。
フレッシュなお若いカップルのふたりも(なんとメラニー・ロランとメルブィル・プポー)自然で美しくっていつまでも観ていたい。キャストのチョイスは素敵だなと思います。
アンジェリーナ・ジョリーだけがひとり、生きる意欲が低下している役なのにアイメイクはバッチリ、いきなり覗きに夢中になる心理も唐突で共感できないし、ピットに心情を吐露する悲しいシーンもやっぱり普段の強い女のイメージが払拭できない。この主人公がお隣のカップルにしでかした事は、本来、どうしようもないやり切れなさ、女のサガを観る側に味合わせてなんぼだと思いますが、ラスト、海辺を去るやり切った感満載のジョリーのしんみりした微笑みにやっぱりナニコレ⁇と思わざるを得ません。

なので、主演がアンジェリーナ・ジョリーでなくもっとこの主人公に対してほんとうに喪失感の痛みから逃れられない女性の心理を演じて繊細な美しさを出せる女優であれば、もう少し観客も映画に入り込めたのではと思います。

それからやっぱり邦題がひどいです。原題のカタカナ読みで良かったのに。