小波norisuke

ヴィヴィアン・マイヤーを探しての小波norisukeのレビュー・感想・評価

4.0
ヴィヴィアンの写真は、ノーマン・ロックウェルの絵を思い出させる。一枚の構図の中に物語を感じる。被写体の心に寄り添っているようだ。とても心惹かれる。

得体の知れない女性。どなたかが(思い出せず、すみません)メリー・ポピンズのようだと書いておられたが、確かに髪型といい、当時でさえ少しクラッシックな服装といい、そしてミステリアスなところまでメリー・ポピンズを彷彿させる。

偶然ヴィヴィアンの写真と出会い、時間をかけて整理して、この世に送り出した監督がすごい。何でも収集してしまうヴィヴィアンに似ている。執念だ。ヴィヴィアンの写真も、ヴィヴィアンという人物も、ヴィヴィアンを見い出だした監督も、とても興味深い。

偽名を使ってまで、自分を見せなかったヴィヴィアン。死んだ後に、自分の人生が、丹念に探られ、このような映画になったことを、身勝手な想像だけど、天国のヴィヴィアンは笑って赦してくれていると思う。

つましく、孤独にも思える彼女の生涯。しかし、彼女が遺した気の遠くなるほどに大量の写真の一枚一枚を眺めていると、とても満ち足りた気持ちになる。こんなにたくさんの人物や物にカメラを向けたヴィヴィアンの人生は、実はとても豊潤だったようにも思えるのだ。

音楽も映像も効果的だ。終盤に流れる「もみの木」が沁みた。

 
小波norisuke

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