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ヴィヴィアン・マイヤーを探してのfieldのレビュー・感想・評価

3.6
公開以来の再鑑賞、ドキュメンタリーとして抜群に面白い。というか、ヴィヴィアンの人物像か。

写真が分からなくても大丈夫、構図の巧さやパッと見た時の格好良さは分かる。プロ写真家による裏付けで類い稀なる才能だったのだと窺い知る事も出来る。15万枚にも及ぶ作品の中から本編用に選ばれた写真はどれもユーモアと悲哀があり、被写体との距離感もどう詰めたのか一番良い瞬間を切り取ったように思える。
無名の写真家として世に発表する事なく亡くなりジョン・マルーフの手に渡ったのは運でしか無いがネガのスキャン化から始まりネット公開を経て展覧会まで、ジョンの熱意も素晴らしい。
大人になってからの恐らく殆どを乳母として働き人との接点を極力絶ったマイヤーの生涯や性格を乳母の雇用主へのインタビューや大量の遺品からジョンと一緒に探っていく。
未現像のネガやブラウスやチラシ、偽名を使った伝票等、掘れば掘るほど風変わりで写真の良さと相まって興味がどんどん湧いてくる。住み込んだ部屋では新聞を積み重ね、男性の拒絶反応は相当だったようだが身寄りも無く人と打ち解ける事もなく感性故の内向的な性格だけでなく過去に相当なトラウマがあったのだろうな。
乳母の合間のストリートフォトや映像フィルムを見ると人間自体は好きだったのだと思える。写真の良さを認識してただろうにアウトプットが得意だったなら望んだ世界が見れてたかも知れない。
何を本当に望んでいたか、体型を隠す服と愛用のローライフレックスと一緒に映る彼女の表情からは何も分からない。喝采を浴びたいだけではないだろう。幸せだったのかどうかだけ気になる。
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