Kota

4分間のピアニストのKotaのレビュー・感想・評価

4分間のピアニスト(2006年製作の映画)
3.7
“いい人間にする事はできないけど、いいピアニストにする事ならできる。あなたにはその才能を磨く義務がある。”

冒頭、狂気的ながらどこか惹かれるようなピアノの旋律をバックに刑務所の中を歩く老婆。ふと止まった彼女の横顔が固まる。そのピアノの旋律は映画の音楽ではなく、映画の中で少女が実際に弾いている音だった。この演出にいきなり鳥肌が立ち吸い込まれてしまった。これは女性刑務所で囚人にピアノを教える80才のクリューガーと、ピアノの才能を持ちつつ人生を壊している21歳の囚人ジェニーとの魂の物語。

「低俗な音楽はやめなさい」「低俗じゃない、これは私の音楽なの」「そうやってみんなにお辞儀をさせたいのね?私は絶対にしない。」セリフの一つ一つが意味を持ち、最後まで真剣に見れば言葉なくとも震えることは間違いなし。ドイツ映画っぽく多くを語らず心に訴えかけて来る。4分間だけ彼女はたしかにピアニストであった。
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