あきら

孤独のススメのあきらのレビュー・感想・評価

孤独のススメ(2013年製作の映画)
4.5
完全にノーマークだったこの映画、個人的には“レヴェナント”、“ボーダーライン”と競って2016年ベスト級。
情だか恋だか愛だか何だかわからなくても、その全部であったとしても共に生きていこうと決めた人間がいて、その人たちがそれでいいならそれでいいじゃないかという内向きと外向きの肯定感を同時に歌い上げる物語が、優しく押しつけがましくなく、それでも、それだからこそ心に響いた。

規則正しすぎる生活を送る初老の男フレッドはある日、言葉も記憶も常識も持たない男テオを拾う。信仰心からだろうか、孤独を埋めるためだろうか、善きサマリア人の如く与え教え導き助ける内に、髭面で歳も自分と近いはずのテオに、フレッドは若くして亡くなった妻と家を離れた息子の面影を同時に見出していく。

信仰篤い田舎街という背景、牧歌的な光景とは裏腹に、話はクスリとなる笑いどころを交えつつもサクサク展開していく。孤独から立ち直っていく男の話として説教臭くなく見ることができたので、キリスト教に関する知識がなくてもついていくことは容易だと思う。86分という短い時間であの始まりからこの結末にたどり着くのかと驚いた。
LGBTに対する差別が比較的少ないであろうオランダで何故ここまで主人公たちは罵られるんだ、という疑問を長く生きてきたフレッドの信仰の根深さを象徴しているのかもしれないという形で納得しかけたところに、思わぬ形で伏線を回収してくる脚本が見事だった。(単に田舎の保守的な村で、ただ深読みしすぎたのかもしれないがそう解釈した)
あきら

あきら