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孤独のススメのしゃにむのレビュー・感想・評価

孤独のススメ(2013年製作の映画)
4.8
「この大きな世界は私の一部。これが私の人生。過去の感情はどうでもいいの」

↓あらすじ
妻と息子に出て行かれ教会に律儀に通う孤独な中年男の家に謎の男が迷い込む。子どもにせがまれると場所を選ばず四つん這いになってひつじの鳴き真似をする変な男。最初は奇行に戸惑っていたものの動物と子どもを愛する純粋な心に惹かれる。2人でコンビを組んで子どもの誕生パーティーで芸を披露すると大好評で次々と依頼が来る。そんな時、ひつじ男の恋人が現れ彼は事故のショックで記憶を無くし徘徊するようになったと知る。彼を自分の元に置いて良いのか迷い恋人の元に帰す決断をする。彼を無くし押し寄せる孤独を紛らわすように酒浸りになる。すると彼がふらっと帰って来る。コンビ再結成。町の人々から迫害されても彼を守る。土砂降りの深夜教会に忍び込んで結婚式を挙げ…

・感想
いつの日にか訪れる愛の形に戸惑う迷える子羊の背を押すヘンテコな人生賛歌。心のストライクゾーンを広げよう。個人的に名作認定したい作品。孤独でさみしいおじさんとふらふらさ迷う純粋で変なおじさんの奇妙な愛の形を描く。おじさん同士の結婚というこれまた奇妙奇天烈な展開にたまげるようでは幸せなど100万光年早い。幸せは美しい恋人とは限らない。理想形を大いに逸脱した困惑する形で幸せが訪れる場合があることを思い知らされる。狭い了見で幸せについて考えて待っていては幸せにはなれない。もっと心のストライクゾーンを広くしてものごとを受け止めてみたら幸せが舞い込むかもしれない。主人公のおじさんは妻と子供に逃げられ(追い出したのかもしれない)孤独に暮らす。ぽっかり空いた心の穴を埋めるように信仰に励む。三度の食事の前にお祈りを欠かさず、日曜日は決まって教会に行く。神父から目にかけられるくらい信仰に熱心に励んでいる。とは言え本音は虚しい。幾ら神様に祈ったって愛しい家族は戻ってこないのだ。信心しながら心のどこかでは神を少なからずうらんでいる。神は何もしてくれない。何か訪れるのを待ち続けるさみしい孤独の日々を過ごしていた。そんな最中、男の家に舞い込んだのはひつじと子供を愛する自由人テオ。無口で少し正気ではない感じの浮浪者のように見える。容姿だけ見れば家に招きにくい。教会と町の人たちはテオを悪魔の手先だと罵り迫害する。行き先なく町を漂うテオを家に招く。食事の前のお祈りもナイフとフォークのテーブルマナーも着替えすら満足に出来ないテオに主人公は甲斐甲斐しく世話をする。買い物に行けばふらっと牧舎に行き人前でひつじの鳴き真似をする奇行をする。普通ならドン引きして家から追い出すものだけどテオの純粋で自由なところに気持ちが許すようになる。子どもの誕生会で2人で芸をする。テオが愉快に動物の真似をして主人公が歌を歌う。楽しくて律儀に通ってた日曜日の教会もすっぽかす。しかしテオの素性が知れると、主人公は戸惑ってしまう。確かにテオがいれば自分は幸せだけど彼には本来の彼の人生がある。自分の幸せのために彼を巻き込んで良いのだろうか。迷った末テオを彼の恋人の元へ帰す。幸せになりたいくせに幸せに臆病。酒に頼り不幸を嘆きつつテオの帰りを願ってしまう。幸いテオは戻って来る。主人公の妻との昔話をする中で結婚しようと言う場面でテオが結婚しようと言い出す。それで妻のウェディングドレスを着せて深夜の教会で結婚式を挙げる。神父な見つかるが気にしない。理解の無い周りの人はテオは悪魔呼ばわりされる。しかし主人公にはテオは天使だ。幸せの形にこだわっていると幸せを逃してしまうのだ。これが私の人生なのだ。ありのまま受け入れよう。心の窓を開けば青い鳥はやって来るかもしれない。
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