ユカリーヌ

野火のユカリーヌのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
3.5
【過去に観た映画】2015.9.7

衝撃的な映像と聴いていたので、かなり覚悟して観たけれど、やはり凄かった。
   
あまり多くを語らず、状況説明もあまりないが、その日本兵達の状況から、過酷さが見える。
   

容赦なく、人が死んでいく様。
無駄に無意味に無作為に、
人を殺すこと、これが「戦」なのか。
   

そして、その極限状態の中で、
人は人でなくなって行く。
   

その狂気の様が美しい緑の自然とのコントラストの中で際立つ。
  

製作、監督、脚本、撮影、編集の全てをこなしつつ主演もした塚本監督も
「美しい自然の中で、なぜか人間だけがボロボロになっていく感じを描きたかった」と語っている。
   

「大自然を舞台にしながらもイメージとしては限られた空間での不条理劇」だとも。
   

目を背けたくなる箇所が何回もあったが、グロいと言ってはいけない。
目をそらしてはいけない。
  

自決することを美徳とされていた時代だが、こうして生きることに執着している人も多くいたのだろう。
   

ラストの自宅の静かなシーンが安堵とともに底知れぬ戦争の悲劇を刻みつける。
    
ユカリーヌ

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