鎌谷ミキ

野火の鎌谷ミキのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.0
【人間ドラマが強い戦争映画】

[あらすじ]小説版を転用
太平洋戦争末期のレイテ島における敗残兵の彷徨を一人称で記述することで、極限的な状況における人間の心理が描かれる。 戦場で生き残り、飢えと渇きで朦朧としながらも野火の方角へ歩き続ける主人公の一等兵は、人肉で飢えを満たす欲望に突き動かされながらも、すんでのところで踏みとどまる。

[レビュー]
本日は広島平和記念日。8時15分postは間に合いませんでしたが、気持ちは同じです。

去年は『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』という、戦時中の日常をほのぼの描いた作品を選びました。今年の作品、実は今年の始めから選んでいました。塚本晋也監督作品は『鉄男』『六月の蛇』しか観てないのに…それでも観たいと。

いつもはしないですが、今回はフォロワーさんのほとんどのレビュー読んで挑みました。何故なら…本作は手加減なしの戦争描写があるからです。怖いグロ系の作品は小さい画面で観ますが、早送りを想定してTVで。しかし、早送りしませんでした、見事なまでのリアリティに圧倒されたのです…ここは確かに人を選びます。私は観てよかった派です。塚本監督が自主制作してでも『野火』を再映画化したいという心意気に惹かれました。見直さないけれど…

その衝撃的な残酷描写の印象が強く、あまり書かれてなかったですが、人間ドラマの側面が強い作品でもあります。同じ敗残兵との信頼関係だったり、裏切りだったり。特徴的なのは、そこに映り込む死体だったりで。ボソボソ喋るので、音量調整難しかったです。

"生きたい"その一心で。作品の根底に流れているテーマはシンプルです。レイテ島の美しさだったり景色の迫力だったりに目を奪われ。しかし、結核を患い衰弱していく体、食料が安定して手に入らず精神的に追い詰められていく過程、終わっていない戦、そして…

やっぱり見終わった後は放心状態になりましたね。でも、目を背けてはいけない事柄だったと思います。やっと、リアルと向き合えるようになりました。グロ克服したのかは謎ですが…

思い出すのは、祖母や祖父のこと。祖父はやはり戦争経験者です。しかし、平和問題について「戦争ってどうだった?」と聞いても、曖昧ではぐらかされたのです。今思えば、幼い私には伝えられなかったのかもしれません。
それから戦争について聞くこともなかったのですが祖母が『硫黄島からの手紙』を金ローでやってて見た時に「戦争ってええことなんかない」とポツリ呟いていたことに、私は泣くことしかできませんでした…

あの時の祖母の言う通りだと、私は強く思います。

【ゴア描写度:★★★★★】
理由:容赦ない。けど、PG-12…
鎌谷ミキ

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