大岡昇平の小説が原作の映画。遥か昔に読んだことがあるが、ほとんど内容を覚えていない…。フィリピンのレイテ島を舞台に、飢えと渇きに苦しみながら彷徨う日本兵を描く。
戦争映画は割と見てきたつもりだが、描写の容赦無さは中々のもの。米軍の機銃掃射によって日本兵が惨殺されるシーンでは腕や足が吹っ飛び、頭が破裂して脳みそが飛び出す。あちらこちらに日本兵の死体が散乱し、暑さで腐り蛆が湧く。疲弊した日本兵の描写が実に見事で、身体中真っ黒、着ている服はこれ以上ないほどボロボロだ。兵隊たちはまるで幽霊のようによろよろと歩きつつ意味不明な言葉を呟き、最後には電池が切れたかのように倒れる。この辺は、役者さんの演技に拍手を送りたい。特に主人公の田村一等兵を演じた塚本晋也には(監督と主演同時にこなしてるのもすごい。「鉄男」でもそうだったか)。
画質がやけに綺麗なのは、全体を通して気になる部分ではある。戦争の混乱を表現するためには、多少荒い画面の方が個人的には好み。手ブレによって混乱を表現するシーンも、画面が綺麗過ぎてイマイチハマってない感じもある。だがあの気合の入ったグロ描写をこれほど綺麗に見れるというのは、なかなか有難い経験だ。それに、実際に戦地に行った兵士たちは、我々が記録フィルムで見るような白黒映像ではなく、この映画と同じ色のついたリアルな光景を、その目に見ているはずだ。
