アリ

野火のアリのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
3.9
自主製作という条件下ゆえか、そもそもの製作意図がそこなのか、感情移入させるための段取りめいたものは廃されています。
感情表現に重きをおかないタイプの舞台劇や、「世にも奇妙な物語」によくあるワンシチュエーションもののような感触に近く感じました。
「戦争のおそろしさや悲惨さを学べるだろう」みたいな気分で見てるとかえって置いていかれる作品かも知れませんね。

冒頭で理不尽に病院との行き帰りを繰り返させられる、ある種コントのようなくだり、それをどう受けとるべきか映画は一切説明しません。
始まりの時点で背景は言われなくても誰もがもう十分追い詰められていることだけはわかる、そして、映画が目指しているのはその先であり、そこで起こることについても丁寧に評価を避けていきます。

誰のせいだとか、ひととしての心がどうだとか、そういうことを取り外して凄惨な状況を正しく凄惨に描くことに注力する、それは見るひとの解釈が届かなければ「ただのグロイ映画」に終わってしまうような潔さで、この言葉が適切かはわかりませんが「面白くなるかは自分次第」のような映画ではないでしょうか。
今の私がこの作品のどこまで届いたかは、自信ありませんが、また見たくなる時が来るんだろうと思います。
そう、特にラストシーンなんか、次に見るときはどう感じるだろうなあ。
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