井出

野火の井出のネタバレレビュー・内容・結末

野火(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

この映画を見れば、戦争が人間の生の反対の概念であることが分かる。人間の生命力に感心する一方で、何のために死ぬのか分からない状況に置かれる戦争に無意味さを感じざるをえない。寄ってくる虫を食い、使えるかも分からない銃を手に機関銃に立ち向かい、味方に殺されるのに震えながらまともに寝れずに、生き残ろうとする。全てが無駄に見えてくる、それは戦争が破壊行為だからだろう。
カメラは客観と主観が入り混じる。劇的な場面で主観となって物を捉えられると、一瞬その場に居る気になる。脳が揺れ、体の芯から震える。だから急にヘリから銃を浴びせられると、避けられない理由が分かる。体が固まる感覚を体験できる。効果的だった。爆音も、ビジュアルも効果的だった。
しかしこれは、完全にフィクションではない。当然リアルがある。戦後70年、どう考えても、戦争は嫌だと思うだろう。戦争に行くのは嫌だから徴兵制は嫌だというのは幼稚だとか言った政治家もいるが、自分が兵隊の立場にたって意見を述べることは、その政治家より社会的なのではないかと思う。この映画はそのことを考えさせてくれる。
そして、更に考えなければならないのは、現地の民間人の狂気の叫びは、他でもなく私たち日本人に向けられているということである。私たちは先祖がかった怨みを、背負っていくのだろう。カメラに向かってあんなに泣き叫ばれると、辛くなる。
大岡昇平、塚本晋也の伝えたいことはそういうことなのかと思う。
井出

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