メイプルわっふるG

野火のメイプルわっふるGのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.0
敗戦間近のフィリピン戦線で彷徨い歩く日本兵。徐々に精神に異常をきたす様が描かれる。

塚本晋也監督・脚本・製作・主演の自主製作映画。
原作:大岡昇平・小説「野火」

鮮やかな熱帯雨林と血飛沫。疲弊し狂気に蝕まれる日本兵たち。そして遠慮なしの残敵掃討シーン。絶えることのない焦燥や閉塞感を感じながら終始魅入ってしまう。
幻覚っぽいウジの洪水や、幻想的な脳みそ花のケイトウ。転がる死体の新旧の差異など見どころ多いものの、やっぱりクライマックスは夜半の死地越え失敗。吹っ飛ぶ部位やこぼれる内臓。塚本作品が戦争映画になると、これほど昇華されるのかと感嘆しきり。

極限状態での変化は免れない。平時の常識は通用せず、変わらなければ死んでしまうだけ。ウミガメのスープならぬサルの肉。
東京大空襲で幼少時に疎開した肉親がいるけれど、焼け野原で大人から食肉を分けてもらっていたとのこと。そして幼い子供たちの役割は死体探し。衛生面や葬るためと決めつけるのは楽観的すぎるエピソード。又聞きの伝聞ではなく、戦争体験者の言葉。

それにしても、『プライベート・ライアン』や『ランボー最後の戦場』などでやや引いてしまった虐殺シーンが、塚本監督だと凄いなぁという受け止め方になるのが、改めて確立された作風と感心。
むしろ東南アジアの高温多湿は、『鉄男』みたいにもっとジメジメ増量で不快指数を高めてもらいたかったかも。欲張り過ぎ?
とはいえ、リリー・フランキーさんをはじめとする演者さんたちが、ただでさえ泥や垢まみれメイクな上に、全身ビシャビシャになってしまうのは流石に厳しいだろう。自主製作映画でここまでの作品を仕上げたことを純粋に凄いと思う。