無名のひと

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うの無名のひとのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

デイヴィスは、妻・ジュリアを自動車事故で亡くしてしまう。
最後の、デイヴィスは冷蔵庫が水漏れしているというジュリアの話をろくに聞きもしていなかった。
妻の死を義父フィルから聞かされても、実感がわかないデイヴィス。
病院内にある自動販売機で買い物をしようとするが、商品は落ちてこなかった。
デイヴィスは、自動販売機の会社に苦情の手紙を書き送った。
その手紙は、知っておくべきだと思うとして、妻が亡くなった自身の話を長々と綴っているものだった。
ジュリアの葬儀を終えて、早々に出勤したデイヴィスに、同僚たちは驚きを隠せない。
その様子を見たフィルは、自分同様ジュリアの死を悲しむあまり受け止めきれないのだろうと解釈する。
フィルからバーに誘われたデイヴィスだったが、話に興味もなさそうな様子に首を傾げるフィル。
フィルは、ジュリアの遺産で奨学金制度を始めることにした。
その役目をデイヴィスに頼んだフィルは、書類にサインを求める。
デイヴィスは、通勤電車で毎日会う男に、マットレスの販売をしていると嘘をついていたことを正直に詫びる。
相手も正直に転職をしたことを告げたので、デイヴィスも正直に「妻を愛していなかった。彼女が死んだのに泣けない」とこぼし、電車の緊急停止ボタンを押す。
鉄道会社に事情を聞かれたが、妻を亡くしたと話を聞けば同情してあっさり解放される。
妻を亡くした男は、取り乱すものらしい。
ある日フィルに「心の修理は車の修理と同じ。まずは分解して見極めろ」と言われ、デイヴィスは冷蔵庫の修理を試みる。
だが、バラバラにしてもなにも分からなかった。
以来、デイヴィスは会社のパソコンやトイレのドアなど、あらゆるものを分解していくことになる。
その後も、自動販売機の会社に度々手紙を送っているデイヴィス。
ある夜、自動販売機の会社の顧客係というカレンから電話を受け、彼女は話し相手がいるかとデイヴィスを心配している様子。
カレンに興味を持ったデイヴィスは、自動販売機会社にカレンを尋ねる。
カレンは不在で、社長のカールが応対したのでデイヴィスは帰る。
分解を続けるデイヴィスに、フィルは専門家に相談するように言う。
ある日、電車で自分を見つめる女性に声をかけたデイヴィス。
雑誌に書かれた宛先を見て、彼女がカレンだと知ったデイヴィスはその住所を尋ねる。
しかし応対したのはカールで追い出されてしまう。
フィルによって、しばらく会社を休むことになったデイヴィスは、解体業者に金をはらってまで家の解体を手伝わせてもらう。
その帰りに再びカレンのもとを訪れるデイヴィス。
カールは出張で不在で、デイヴィスとカレンは体の関係を持たず一緒に眠る。
カレンはカールを恋人だが愛していないと言う。
カレンに連れられ、デイヴィスは古いメリーゴーランドの解体を依頼される。
ある日デイヴィスは、カレンの息子クリスと話をする。
クリスは、中東情勢に関して問題発言をして、学校を停学していた。
デイヴィスはクリスの話に耳を傾け、銃を撃ってみたいと言うクリスに銃を撃たせてやる。
防弾チョッキで弾丸を受け止めたデイヴィスに、他の大人と違うものを感じたクリスは、次第に彼に心を開くようになっていく。
誰にも話せなかった、自分がゲイかもしれないという悩みも相談するクリス。
デイヴィスは偏見を持たず、卒業後は差別が少ない都会に引っ越すようアドバイスをする。
そしてクリスを連れて帰宅したデイヴィスは、ふたりで家中を解体して回る。
普段はカレンの家に入り浸っているある日、デイヴィスは妻の引き出しからエコー写真を見つける。
デイヴィスは彼女が妊娠していたことを知らなかった。
フィル主催のパーティに、妻を亡くして早々女性(カレン)を同伴したことに腹を立てたフィルは、デイヴィスが死ねば良かったと彼を詰る。
デイヴィスは義父母にカレンの妊娠を知っていたかと質問する。
彼らは、カレンが浮気をしていて、その相手の子を身ごもったとことがあると告げるのだった。
出張から戻ったカールは、カレンがデイヴィスと浮気していると疑ってデイヴィスを殴り付ける。
その頃、クリスはクラブに行ってリンチに遭う。
ある日デイヴィスは、車のサンバイザーに付箋が貼り付けられているのを発見する。
そこには「雨の日は会えない、晴れの日は君を想い出す」と書かれていた。
それは、ジュリアに興味を持たないデイヴィスに宛てた、雨の日くらいは自分を思い出してほしいというメッセージなのだ。
一時の浮気はあったものの、ジュリアが確かに自分を愛していたことを知るデイヴィス。
フィルに会いに行ったデイヴィスは、ジュリアに構いもしなかった自分を認める。
しかし、奨学金制度ではなく別のことに遺産を使わせてほしいと頼むのだった。
デイヴィスは、解体予定だったメリーゴーランドを浜辺に設置し、子どもたちを乗せてやる。
デイヴィスはかつてジュリアとメリーゴーランドに乗った思い出があった。
ある日、デイヴィスはクリスから手紙をもらう。
そこには、カレンがカールと別れたこと、埠頭に向かうように日時が指定されていた。
デイヴィスが埠頭に向かうと、大勢の人が集まる中でビルの大規模な解体が行われた。
その様子をクリスは双眼鏡で見つめている。
かつて速く走れることに憧れがあったデイヴィスは、子どもたちを相手に本気で走り出すのだった。



途中ダレたものの、タイトルの回収は素敵だった。
クリスとの関係が深まっていくのが見ていて心暖まる。
カレンとの今後の展開はさておき、クリスとはこれからも親交を暖めてほしいと思う。
デイヴィスがジュリアからの愛情を感じ、ではデイヴィスはジュリアを愛していたか。
私はジュリアを愛していたと思いたい。
泣けないと言いながらも、度々ジュリアを思い出していた。
解体は、どこかおかしい自分の心を解体して、再構築したい思いがあったからだと思う。
カレンと直接交流が生まれても手紙を書き続けたのも、言葉にすることで思いを整頓したかったのでは?
ジュリアは支援学校で教師をしていた。
メリーゴーランドに乗っていた子どもたちは、子どもたちを思うジュリアの心情を汲み取ったデイヴィスが、支援学校に通う子どもたちを招いたものだったらいいと思う。
せめて晴れの日くらい自分を想ってほしいジュリアは健気だ。
相手に寄り添えない一面があったデイヴィスの性格が、果たして今後変われるものかは分からない。
カレンとの間に愛情が生まれるかもしれない。
ただ、付箋は剥がさずにこれからも晴れの日にジュリアに想いを馳せてほしいと思う。
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