国分蓮

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うの国分蓮のレビュー・感想・評価

4.4
原題「Demolition=破壊」
恥ずかしい邦題はこの際忘れよう。別れから出会いがあるように、破壊から再生がある。
さぁ、君も壊れよう。
そこから見える何かがある。
ジェイクのぶっ壊れダンスから学べるものはきっとあるはずだ。

事故で妻を亡くしても一切嘆き悲しまないエリート銀行マンが大切な何かを思い出すために、ひたすら破壊!分解!破壊!分解!の限りを尽くすアクショ…ヒューマンドラマ。
「ナイトクローラー」の怪演が記憶に新しいジェイク・ギレンホールがまた頭のおかしい役で戻ってきた。でも、あんなアウトローじゃなくて今回は一応会社に属しています。そんでもって大金持ち。
誰もが羨むステータスだが本人にはその自覚はなし。自分では誇るものではないと思っている。
当たり前の日常、当たり前の仕事、そして当たり前の結婚…。
その、物に対する冷ややかな目線はさながらアンドロイドのよう。
そんな男が奥さんを亡くしたとしても何も変化はないのか?
否、彼は徐々に周りで起きてる様々な細かいこと、もの、仕組みに気付き始める…。そして一番重要なことを。

「ダラスバイヤーズクラブ」で人間の奥の奥、それも深いところにある心そのものを描いていたジャン=マルク・ヴァレ監督作。
そこまではさすがに及ばないが、きちんと人間を描いているなと思った。重い話かと思えばちっとも、むしろそのライトっぷりが残酷なんです。笑える場面が結構出てくるし、ちょっと不謹慎な内容のシーンまでよりどりみどり。
「キックアス」のビッグダディとヒットガールのシーンを思い出してしまったのは僕だけでしょうか。笑
良い子は真似しないように。

クソガキ役のジュダ・ルイスのファッキン美少年っぷり。世紀の美少年と言われた「ターミネーター2」のエドワード・ファーロングに瓜二つです。生意気っぽさもファッキンそっくり。
だけど今回は一歩上をいくファッキンMr.BIGの♪freeのドラムをコピーしてるロックンロールなクソガキだ。不良の中にも芯があるファッキンクソガキ。これは間違いなく良いクソガキだ。
おっとクソやらファックばっかり口をついて出らぁ。
多用すると馬鹿だと思われてしまうな。
使う場面やらタイミングに気をつけないと良い大人になれないぜ。
という下りは実は劇中にあってなかなかどうしてなるほどと思った次第です。

終盤物足りなさはあるものの、しっかりまとめてきたところに監督の手腕を感じます。
自分はジェイク・ギレンホールのファンを公言しているのでいくらか甘い評価になってしまいますが、観終わった後に自分の生活を点検して破壊衝動に駆られてしまったのは事実です。
つまんない男になりかけるところでした。観て良かった。まだ間に合った。危ない危ない。

主人公は、ほとんどのものを破壊し尽くしたってぇのに、まったく生活に不自由しなかったのが驚きでした。実は生活に必要なものはごく僅かなものでいいのでは?ミニマリスト。むしろ、感情は豊かになった。言うなればアンドロイドから人間になる映画、体制から反体制へ、という風にも捉えられる。
自販機で引っかかって出てこなかったM&Mの値段以上に価値のある体験を彼はしたことになる。

一番面白かったのはやっぱりジェイクの街中ダンス。実はこのシーンはユーチューブで先に見てしまったのですが、それでも大笑いしてしまいました。適当にやるかと思ったら結構本格的に踊りやがって。

鑑賞された方は、今後イヤホンでMr.BIGやらHeartは聴かない方がいいと思います。良い子は真似しちゃだめと言いましたが、良い大人が真似しそうでこわいです。
国分蓮

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