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ローズの秘密の頁(ページ)のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

 アイルランド歴史勉強第二弾として鑑賞。前回観た「フールズ・オブ・フォーチュン」のその後、第二次世界大戦禍が時代背景となっている。アイルランドは中立を図り戦火を免れるも、国内での独立派(アイルランド共和軍)との居心地の悪い関係が続く。ひとつのラブストーリーが、切っても切れない歴史の惨禍と絡み合う。

 前回もそうだったが、歴史を振り返るという体のため現実と過去のクロスカットが今作にもある。歴史ものにつきものな形式と言えばそうだが、その過去と現代のハレーションを引き起こそうという目論見を感じられる。「フールズ〜」と同じく、過去の情事に介入する現実ショットのしつこさはなんなのだろう。アイルランドは保守的カトリック層が多く、性行為自体がタブー視されており、そうした葛藤がこういうカット割りを無意識的に生んでいるとも言えるかもしれない。

 性がタブーであると、女性への風当たりも自ずと強くなる。ローズが恋した相手はイギリスに協力的なためにIRAに目をつけられ、逆にカトリック教会の神父にはその権力でもって好意を拒めず、しかしカトリックの神父は生涯独身が義務なのでひた隠しにされ、淫乱とされて精神病院に。父親の判明しない子供は当時アメリカに無条件で養子に出されており、生き別れに。まさに生き地獄、最後にはこれが報われるんだから驚きである。そんなどんでん返しありかよと思ったが、あの神父が巡り会わせた機会だそうで(若干わかりずらい)、贖罪として受け入れるしかないなと。どうでもいいが、男のアピールはバイクや権力というものに依存しすぎでは。

 中立国であるアイルランド特有の不条理。国内での人間不信が募り、事実北アイルランドはイギリス領である。戦後は中立であったがためにヨーロッパからの孤立化を迫られもした。アイルランド出身のベケットの「ゴドーを待ちながら」という戯曲は、浮浪者二人のいる場所以外の時間が歪んでいる。さっき来た人らは、さも初めてかのように2回目で接してくるし、盲目と唖になって戻ってくる。それは目まぐるしく変わっていったヨーロッパに置いていかれるアイルランドの孤独が生み出した物語だったのかもしれない。
 
 ルーニー・マーラ、とことん不幸が似合うなと思った(「ドラゴンタトゥーの女」でもそうだったけど)。ホアキンもそうだけど、なんだろうあの二人(カップル)の幸薄美男美女感は。

 潮の満ち引きで通れない道があったの面白かった。アイルランドの人は教習所とかで習うのかな。
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