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世界一キライなあなたにのeichanのレビュー・感想・評価

世界一キライなあなたに(2015年製作の映画)
4.0
重度身体障害者のウィルとその介護を任されたルーの恋愛物語。若い二人がお互いを信頼しあって愛を深めていく様子には感動を覚える。
しかしこの映画においては、二人の愛に「生きることの意味」「介護におけるジレンマ」といった難しい問題を投げかけるところが残酷で素晴らしい。

障害者の身体だけでなく精神的にもサポートしていく。これが介護の原則である。介護を受ける人が「その人らしく」在り続けられなければ真の意味で介護とは言えない。それを踏まえてルーのウィルとの接し方を見返すと、ルーはウィルに対して自分の考えを押し通そうとする場面が割とある。話が進むうちに恋人としての接し方が目立つのである。この恋人として、介護人として、彼の尊厳にどう向き合うか、この葛藤の描かれ方はとても良かった。家族を介護している人であれば「尊厳は守りたいけど愛ゆえに容認できない」、このジレンマと同じだと気づくはずだ。

安楽死、尊厳死は正義か悪か。この考えにある程度答えを持っている人であれば、ラストシーンに向かうにつれて首を傾げてしまう場面があるかもしれない。モヤモヤが残る人はこう考えてほしい。「この映画では、安楽死、尊厳死は正義とも悪とも描かれていない」。最後の場面のルーがどのような思いで街を歩いているのか思いを馳せてみるとこの映画に深いコクが出る。

愛する人が突然重度障害者になって「死にたい」と言ったらどうするか。この作品が答えになるわけではないけど、そのような問いを考える機会を与えてくれる素晴らしい映画なので、ぜひ見てほしい名作。
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