かえで

世界一キライなあなたにのかえでのレビュー・感想・評価

世界一キライなあなたに(2015年製作の映画)
4.1
四肢麻痺のウィルと、半年限定で介護士として雇われたルーの物語。ラブストーリーとしては中盤まではわりとありきたりな展開ですが、良い意味で純愛!美談!というわけではないのが良かったです。口に出すのも憚られるほど邦題が酷いこと以外は素敵な作品でした。上映中、あちこちからすすり泣く声が聞こえたけれど、私は泣けはしなかったな。それよりも色々なことを考えさせられる作品だった。

ウィルの決断については否定的な意見が多いのも納得できる。確かに悲劇のヒロイン気取りとか自分勝手とか、思わないこともないけれど。でも、人の苦しみというのは本人にしか分からないもので。側から見れば何でも持ってるじゃん!幸せじゃん!と思えるような状況でも、必ずしも当人にとってそうであるとは限らない。だからこそ、ウィルの決意には賛成も批判もし難くて…。愛する人や大切な人たちを大事にしたいからこその辛さだってきっとある。『どんな状況でも、やっぱり生きるって最高だよ!がんばろう!』という作品が多いなか、この作品の問いかけにはとても考えさせられる。生と死について。そして幸せについて。
「他人を変えることはできない」「じゃあどうすればいいの?」「愛することだよ」お父さんとルーの会話がじんわり沁みた。

ヒロインを演じるエミリア・クラークがとってもチャーミングで、くるくる変わる表情がすごく楽しかった!個性的なファッションも可愛いし、コンサートと結婚式のシーンのドレスもどちらも素敵。そしてサム・クラフリンもとってもイケメンで、もう画面を見ているだけで目が幸せ。(『あと1センチの恋』の彼だったこと、後から気づきました…!) ルーがウィルの髭を剃るシーンがなんだかとっても官能的でした。モーツァルトの演奏会の帰りの車のシーンもすごく好きだし、そこで流れるのがオーボエ協奏曲というのもとても良き…!結婚式でのダンスも可愛かった。首から下が動かないウィル、だからこそ2人のキスって本当に特別なものなんだなあと思ったら、キスシーンひとつひとつがすごく尊くて切なくて。はあ、思い出すほど好きなシーンが沢山。ただ、やっぱりちょっとパトリックが可哀想だなあと思うところもあるのだけどね……
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