陳知春

HANAMIの陳知春のレビュー・感想・評価

HANAMI(2008年製作の映画)
4.0
ドイツで初めて観たドイツ映画。
正直、この映画にどういう意味が込められているのか、まだ整理がつかない。

監督のドーリス・デュリエが何故日本に興味を持ったのかいまいち謎だが、ここドイツでは著書も沢山お持ちのようで、いつか読んでみたい。そういえば最近、福島に関する白黒映画を撮ったと、ARTEで観たのを覚えている。

ここで出てくる日本とは、ドイツの正反対にある不思議の国として描かれている。主人公の旦那が自分の妻の別の知らない側面を、日本という場所を通して体験することになる。結局、長年連れ添ってきた夫婦であっても、相手のことを理解し合ってるとは言えない。それが、この映画の冒頭の雰囲気であり、家族に冷遇されて主人公が孤独になる必要があったのだ。

さて、日本を体験しながら、本当の妻を探しつつ、それと鏡に映るように妻の像を通して自分自身をも探しているといえる。ドイツとは全く違う場所だという描写が続くが、まぁここら辺は興味本位で観ればいいだろう。最後のシーンだが、彼は妻を受け入れたのか、自分を受け入れたのか、あるいは自己満足に始終していただけなのか、観客の想像に任せられる。他人を、そして自分を受け入れるのは困難ではあるが、その過程を通してこそ美しいものが生まれるという意味ではないのだろうか。

ホームレスといういわゆる周辺集団に属していたからこそ、主人公を導くことのできた謎の少女の存在や、東京で働いている主人公の息子が暗示するものなど、僕は演劇とかの専門ではないが、古典的なモチーフのような気もする。それぞれが意味を持ってて、深い。

人を理解するということを日本を通して描かれるこの映画。残念ながら、日本では全く知られていないが、万人にお薦めできる美しい映画です。
陳知春

陳知春