SANKOU

カリートの道のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

カリートの道(1993年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、いきなり主人公のカリートが銃弾に倒れる場面から映画は始まる。
彼の目線の先には「楽園への逃亡」を意味する広告が。
どうにも悲劇的な結末を予感させる幕開けだ。
しかしそれを思って観たとしても、なかなかにスリリングで引き込まれる作品ではあった。
元麻薬王のカリートは親友の弁護士デイヴの尽力により、30年の刑期をたったの5年で終わらせて出所する。
彼は犯罪の世界からきっぱり足を洗い、バハマでのんびりとレンタカー屋を営む人生を歩もうとする。
しかし一度犯罪の匂いが染み付いてしまった彼は、なかなかその道から抜け出すことが出来ない。
それを象徴するかのように、早速カリートは運び屋をする従兄弟のトラブルに巻き込まれてしまい、不本意ながら攻撃を加えてきた売人たちを射殺することになってしまう。
彼は従兄弟が手にしていた金を投資してディスコの経営に携わり、バハマへ行くための資金を貯めようとする。
かつての仲間たちはカリートを再び犯罪の道へと引き込もうとする。
検察側はカリートにボロを出させるために罠を張る。
見境のない殺人や裏切りが横行する裏の社会。
自由を得ようとするカリートの前に立ちはだかる障害は多い。
かつての恋人ゲイルとの駆け引きは色々と観ていてドキドキさせられた。
夢をなくしてしまったバレリーナのゲイルと、新たな夢を見つけたカリート。
カリートはゲイルにきっぱりと裏社会からは手を洗ったと告げる。
そして彼女をバハマに連れていくと約束する。
しかしカリートにとって一番の障害となったのは、恩人であり友人のデイヴだった。
デイヴは弱みを握られ、ある服役囚の脱獄を手伝わなければ殺される運命にあった。
友人が助けを求めていれば、それがたとえ犯罪行為だとしてもカリートには断ることが出来なかった。
カリートはデイヴへの借りを返すために、脱獄の手助けをすることを了承する。
最初は優秀で真面目な弁護士に見えたデイヴだが、次第にコカイン中毒により言動が狂っていく。
なんとデイヴは脱獄した服役囚とその息子を作戦中に殺してしまう。
もし殺さなければ、いずれ自分が殺されるのだと、己の行為を正当化するデイヴは完全にサイコパスのようだ。
絶対に越えてはならない一線を越えてしまったデイヴ。
彼に加担してしまったカリートもまた真っ当な道に戻る機会を失ってしまったようだ。
カリートとデイヴは殺した服役囚の一味によって命を狙われる。
デイヴはなんとカリートを検察側に売るような裏切り行為も働いていた。
自分を裏切ったデイヴを庇うような素振りを見せたカリートだが、実はそれは巧妙な復讐だった。
襲撃され負傷したデイヴの病室を訪れるカリート。
彼はこっそりとデイヴが護身用に携帯する銃の弾を抜く。
いずれ刺客がデイヴの命を狙ってくるのは分かりきったことだ。
案の定、デイヴは警官に成り済ました刺客によって撃ち殺される。
弾の抜かれた銃を不思議そうに眺めるデイヴの表情が印象的だった。
追手から逃れようと駅のホームや電車の中をカリートが逃亡するシーンはスリリングだ。
ブライアン・デ・パルマ監督は『アンタッチャブル』の時もそうだったが、駅を舞台にした銃撃戦を描くのが上手い。
あと少しで自由への道が開かれると思った瞬間、カリートは彼がかつて無下に扱ったチンピラに銃撃される。
そしてそれも部下の裏切りによって手引きされたものだった。
これは逃れられない道だったのか?
それともこれはカリートが選んでしまった道だったのか。
冒頭で予感されたように、最後に果たされなかった楽園へと続く夢を見ながらカリートは息絶える。
アル・パチーノの哀愁漂う姿も印象的で、自業自得とはいえ最後は彼に肩入れしてしまう部分もあり、悲しい結末に心が痛くなった。
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