まー

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分のまーのレビュー・感想・評価

4.0
"緊迫のリアルタイム・サスペンス"
確かに緊迫感や先の展開が気になるハラハラ感はありますが、これを「サスペンスもの」として観に行ってしまうと、思わせ振りに何度も出てくるあれとかこれとか、最後への伏線なのかも…と深読みしてしまって、終わった後にがっかりするかもしれません。
それよりもドキュメンタリーものと言った方が、観る人の期待に沿うんじゃないかと思います。

最初は主人公の行動が理解できなくて、若干イライラしましたが、徐々に状況が分かっていき、共感はできないけどなるほどね、と。
そんな状況を会話だけで説明する脚本はすばらしいです。
また、電話越しに声だけ登場する俳優さんたちもすばらしい。
特にドナル役のアンドリュー・スコット。
唯一劇場で笑いが起きたのも彼のシーンでした。
電話の向こうで彼が演じてると思うと、何だか憎めない。
彼の役柄が緊迫したストーリーを解きほぐす、良いアクセントになっていました。

あと、これを観終わった後にまず感じたのは、違う俳優さんが演じたらどうなっていたか、と言うこと。
あの人だと演技がちょっと大げさになってたかも?とか、あの人は顔からして普通の人には見えないだろうな、とか。
トム・ハーディは独特なキャラクターを演じるイメージが強かったので今回の役柄は最初物足りなく感じたんですが、こんな風に普通の人を自然に演じることもできるんだ、と気付いて考えが変わりました。
表情の作り方とかしぐさも上手なんですよね。
しかも、実際の撮影では大まかなストーリーだけ聞いて、セリフはカンペを出してもらってそれを読んでいたと言うから驚き。
あまりに自然に話していたので、メイキングが見てみたくなりました。

ストーリーを重視したり、登場人物に感情移入するタイプの人には向かないと思いますが、トム・ハーディの演技を堪能できる良い映画でした。
まー

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