骨折り損

ギヴァー 記憶を注ぐ者の骨折り損のレビュー・感想・評価

ギヴァー 記憶を注ぐ者(2014年製作の映画)
3.7
人類の完全なる平等が確立された未来っていう設定に惹かれて鑑賞。

完全なる平等の為に、感情を抑える薬を飲み、歴史も人々の記憶から消された世界で、たった一人、ギヴァーと呼ばれる歴史の継承者だけは人類の歴史を受け継いでいたってめっちゃ面白そうじゃん?

実際こういう設定ゴリゴリに固めたSFものってだいたい設定頼みで展開の既視感と物語のつまらなさでガッカリすることが多いんだけど、この映画はけっこうちゃんと楽しめた。

主人公が人類の記憶を受け継ぐ過程で、知らなかった感情に出会い感動するのも、知らないはずの経験なのになぜか自分ごとのように気持ちが理解できた。全てが統制され違いを間引いた世界だからこそ、僕らの日常のなんてことない映像がふと挿入されるだけでとてもかけがえのないものだと素直に思えた。

個人個人に差異がないことで平和であるはずの世界と、過去の記憶を手に入れてからそのリズムを崩す危険因子になる主人公。その対比がなんとも皮肉で、考えさせられるものがあった。

主人公にとっては悪役のような立場の体制側も、彼らなりの正義があってこの社会を持続させようとしていると理解でき、勧善懲悪ではない構図も良かった。

しかし、いかんせん致命的だなと思ったのが、感情を抑えられた未来人の設定なんだが、冒頭からの主人公グループの楽しそうな様子を見ていると、全然そうは見えず、その後主人公が薬の投与をやめ感情を取り戻していく過程との差があまりないように感じてしまった。

フリの段階でもっと明確に違いをつけられていれば主人公の変化により感動できたかもしれない。

あと、外の世界に出ればみんなに記憶が戻るみたいなのが急にご都合主義過ぎて冷めた。こんなに設定や世界観頑張って作られているのにオチだけ捻りのないアクション映画だった。

割と大事なところが腑に落ちず、大満足とはいかなかったが、それなりに世界観が楽しめる良作だとは思う。
骨折り損

骨折り損