かわさき

ディーン、君がいた瞬間のかわさきのレビュー・感想・評価

ディーン、君がいた瞬間(2015年製作の映画)
3.9

 実は邦題と原題で大きく違う。原題は『LIFE』。ロバート・パティンソン演じるデニスが写真を提供する雑誌社の名前だ。デイン・デハーン演じるジェームス・ディーンの名を冠している邦題と対照的である。

 どちらも正しいと思う。というのも、本作はまさしく対照的な二人の絶妙な関係性で成り立つ物語だからだ。写真でその身を立てようと必死なデニスと、マイペースでどこかニヒルなジェームス。

 20世紀最大のヒーロー、ジェームス・ディーンの自伝かと思いきや、本作はそうではない。この映画においては、彼を撮るデニスの存在こそ重要である。監督のアントン・コービン(音楽界隈では知らぬ者はいない伝説のロック・フォトグラファー)が元々写真家だから、外側を主軸にしてジェームス・ディーンを映したかったのかもしれない。

 その熱意は十分伝わっており、静謐なタッチながらも刃物のように鋭いショットが連なっている。ジェームスが路上を歩く有名な写真の再現があるが、そのシーンにはコービンの執念を感じてしまった。で、その「外側役」に徹したロバート・パティンソンは見事である。主役でありながら影に入ることは容易くはなかったろうが、今の彼にはそれができるのだ。派手な役柄ではないからこそ、役者としての成長が窺える。最新作の『グッド・タイム』ではド級の演技を見せているが、今思うと本作『ディーン、君がいた瞬間』こそ分岐点だったような気がする。
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