グラッデン

ドリーム ホーム 99%を操る男たちのグラッデンのレビュー・感想・評価

4.2
2000年代後半に発生した金融危機の震源地にもなったアメリカの住宅市場の混乱を背景とした「家」を巡る物語。

オリバー・ストーン監督の『ウォール街』を初めて見た時、この作品はアメリカ社会を映す鏡であると感じましたが、本作も同様に、住宅金融市場の世界が作り出した大鏡を通じて、アメリカ社会の歪みを垣間見れたと思います。

世界の金融市場の中心地を舞台にした『ウォール街』の時代から四半世紀が経過した『ドリームホーム』では、高層ビル群に囲まれた金融街や億万長者も出てきません。

スクリーンに映しだされるのは、燦々と照らされる太陽の下に並び立つ、西海岸の住宅地であり、居住者の立ち退きを迫る保安官と差し押さえを宣告する不動産仲介業者・カーバー(マイケル・シャノン)の姿です。

しかし、ゲッコーが市場の推移を見て株式投資を行っていたように、カーバーは地図を見て投資の対象になりそうな住宅に目を光らせます。

時代も立場も異なる両者に共通するのは、持ち主には大切なモノである会社にしても住宅にしても、あくまで投資の対象であるという立ち位置を取っている点です。そして、そうした価値観が主人公の運命を最後まで揺さぶり続けるのです。

カタチは変われど、本作で提示された構図は『ウォール街』と同じではないかと思いました。

「アメリカは負け犬には手を差し伸べない。この欺瞞の国は勝者による勝者のための勝者のための国だ」

本作の主人公・ナッシュ(アンドリュー・ガーフィールド)に対して、雇い主である社長のカーバーは、このような言葉を言い放ちます。

強烈な言葉ではありますが、私はアメリカという国の「本音」のようにも聞こえました。

持つ者、持たざる者という違いこそがこの国の社会階層であり、そのどちらにでもなり得る権利と機会こそが平等である。所謂「アメリカンドリーム」が持つ光と闇を凝縮したような言葉だと思いました。

そういう意味では、久々にアメリカという国について深く考える機会にもなる作品となりました。