不在

あやつり糸の世界の不在のレビュー・感想・評価

あやつり糸の世界(1973年製作の映画)
5.0
我々がいるこの宇宙は様々な法則に従って存在しているが、そのどれか一つが少しでも変化すると、今のこのような形にはならない。
人類にとって、あまりにも都合が良すぎるのだ。
誰かが組んだプログラムだと言われても納得してしまうくらいに。
この世界は人工的に創られたのだろうか。
もしそうならば、人は一体なんの為に生きるのか。
そもそも人間の定義とは。

宇宙とは観測する人間がいるからこそ成り立つという、人間を中心に据えた考え方もある。
まさにこの映画の世界だ。
模造された世界、人が創った世界、神による創世。
人類は常にその世界の実在に疑問を呈してきた。
目の前の光景は本物か。
鏡に映る虚像ではないか。
自由意志すらも他者に植え付けられたものかもしれない。
決定論的にあらかじめ決められた世界とどう向き合うか。
皮肉にも本作で示された答えは、その追求を諦める事だった。
最後に彼が辿り着いた世界も恐らく本物ではない。
この映画は自分が生きるこの世界が本物か疑うのではなく、そこを本物として生きていく事の重要性を説いているのだ。
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