井出

あやつり糸の世界の井出のネタバレレビュー・内容・結末

あやつり糸の世界(1973年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

日常世界を構成する観念、イデオロギー。私たちは確かに、上の次元に操られているのかもしれない。私たちは少なくとも自分が日本人だと信じているし、平和で自由に暮らしていると思っている。国なんて幻想だ、なんでサッカーの日本代表を応援しているのか、私たちの選択は全て制限されている、今ほど平和でない時代はない、なんて言えば確かに狂気と言われ、抹殺される。
そう考えると、この映画はものすごくリアルである。
逆に言えば、私たちの現実はものすごくSF的である。
学生運動とマルクス主義、ドイツ観念論、現象学。こういった背景のなかで、ファスビンダーもあやつられていた。
そして、その下の世界を傍観している私たちもきっとそうである。

ファスビンダーを見て思うのは、ものすごい違和感というか、題材がSFでなくても、不思議な感じがする。それはおそらく、そういった支配に対する抵抗なのだろう。私たちにとって全て理解可能なものを作ってしまったら、それはもはやまったく自由のないものである。解釈不能なぎこちなさ、そこに作り手たち、観客たちの自由を見出そうとしているのかもしれない。デカルトの言葉に希望を見出しているのかもしれない。あえて、それはある種、無意識の世界に真理か何かを求めたダリに通じる部分があるだろう。

音楽や効果音はいい感じだった。
井出

井出