地底獣国

デスペア 光明への旅の地底獣国のレビュー・感想・評価

デスペア 光明への旅(1977年製作の映画)
3.5
ナボコフの原作は未読。主人公ヘルマン・ヘルマンは妻の浮気やら大恐慌やらナチスによるユダヤ人迫害やらでどんどん抑鬱が進み、今の生活を捨ててドイツから脱出する事を夢見ている。ドッペルゲンガーをテーマとした映画を観たあとで出会ったフェリックスという男を自分の影武者に仕立て上げ、保険金目的で殺害して彼と入れ替わるという計画を立てる…

前半はかなりのスローペース。撮影監督バルハウスの匠の技と役者の顔力で何とか持ち堪えた感じ(主演のダーク・ボガードはクラウス・レーヴィチュ、フォルカー・シュペングラー、ハーク・ボームら常連組に引けを取らないイイ顔)だが、偽装計画が始まるあたりから俄然調子が良くなってくる。

ヘルマンの精神が序盤から「体外離脱して妻とイチャつく自分の姿を見る」「保険会社のセールスマンにカウンセリングしてもらう」とか、かなりヤバめの状態。なので(似ていると言うにはおよそ無理がある)フェリックスを見かけたヘルマンがハッとなって「鏡を見ているようだ」と思い込む場面とか視聴してるこちらもフェリックス同様「何ゆうとんの?」ってなるんだがそこまでの経緯からすると「そういうこともあるかな」となんとなく納得。

計画の前提からしてそんな具合だからその後も推して知るべしで、それでも当の本人は「完全犯罪だ!」とか得意気にしてる(「アングスト/不安」を連想する)わ、当然のように警察に容疑をかけられて「え?」って感じで狼狽えるわ、しまいにはあんな事言い出す(詳細はコメント欄にて)わで、見事な非喜劇を披露してくれた。

現在配信はもとより、ソフトも国内ではリリースされていないんで視聴のハードル高めだけど、興味を持たれた方は頑張って検索していただきたい。

それにしても「ゴミ,都市そして死」は問題で本作はOKっていうのはよう分からん。
地底獣国

地底獣国