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第三世代のtntnのレビュー・感想・評価

第三世代(1979年製作の映画)
4.4
"Die welt als wille und vorstellung"
速すぎる。煩すぎる。
テレビの音声と、本の朗読と、サントラと、台詞とが一気に被さり、カメラは所狭しと部屋を動き回ったかと思いきや、不規則なリズムでショットが挿入される。
滅茶苦茶格好良いオープニングクレジットに本作のテーマや意図が凝縮されている。
若者の反逆が資本主義と国家権力にそのまま利用される展開と、カラーデザイン含めて緻密に作り込まれた画面作りを見ていて、キューブリックの『時計じかけのオレンジ』を一番連想した。
ただ参照元としては、ゴダールの1960年代後半の政治劇が一番適切かもしれない(その辺ちゃんと見てないから何とも言えない)。
基盤は軟弱なくせに頭でっかちな理論だけを振り翳して革命に奔走するが、それは最早サーカスの道化達による愚かな空転でしかないという諦念に満ちた姿勢は、トーマス・マンらが度々語っているドイツという国家への批判的視座と共通する部分もあるかなと思う。
立派な志も持たずにアジトで遊んだり醜くいがみ合うだけの若者達が主人公だからこそ、第三世代と社会との接点がほとんど見えてこない。この点は、社会の中で徹底的に集団から排除される人間の孤独を描くファスビンダーのテーマとは少し異なる。
終盤の道化的装いをクィアリーディングすることってできるのだろうか。(70年代前半のファスビンダーは『不安と魂』しか見てないけれど、セックスや人種などの規範からの逸脱とその挫折を繰り返し描いているのではないだろうか。)でも結局搾取されているのならば、絶望と突き放しに満ちた表象にも思える。『不安と魂』ではここまで登場人物のことを容赦無く見つめてはいなかった。ファスビンダーと革命について考える必要あり。
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