あなぐらむ

生贄夫人のあなぐらむのレビュー・感想・評価

生贄夫人(1974年製作の映画)
5.0
みうらじゅんのベストらしい。
田中陽造のオリジナル脚本を、「花と蛇」で組んだ小沼勝と谷ナオミの黄金コンビで。田中脚本らしく心中を絡めながら、男が求める「絶対の愛」を描く。

冒頭から不穏な空気が湿度と共に画面を支配し、むわっとする画面の中で谷ナオミが震える程美しく輝く。
小沼監督はまだSM物は少なかった筈だが、人、物の配置と構図が見事。
森勝カメラマンの艶のある画が抜群の冴え。
最後、縄と陵辱の魅力に憑りつかれ「おんな」として強烈な自我を放つ(排泄も見せつけてしまう)谷ナオミに恐れをなし、監禁していた夫・坂本長利はかつて自分が誘拐した幼女(=自分だけを愛してくれる存在)と再会し、逃避行するところで終わる。
このオチのなんと現代的な事か。ちょっと戦慄する。

心中崩れの若いカップルで東てる美が出ているが、これは谷の主催劇団の団員だったため。当時の若者の影のビーナスだった。相手はお馴染み影山英俊。

MはマスターのM、Sはサーバント(奴隷)のS。表裏一体。
SはサービスのSとも言う。
谷ナオミは責められていながらも男を封じ込めていく女のタフネス、性愛の底知れなさを体現している。