「奇跡の2000マイル」を見たんで、こっちも見ておくか的なノリで見て、冒頭からもうまさに原題「WILD」って感じでした。
パシフィッククレストトレイルというシチュエーションもつらいけど、それ以上にシェリルが心に抱えているものがとてもつらくて。
大切なものを失ったとき、自分がまだ生きていかなきゃならない絶望感、その闇に呑まれてしまうかどうかって、たぶん本当にちょっとしたことなんじゃないかと思います。
実話ベースなのですが、妙に女性映画らしいというか、どこか象徴的なエピソードが織り込まれて、その虚無がとても生々しく感じられました。
自分の人生を生きられなかった母親世代、その愛の元で多くを手にしたのに思うような「良い娘」「良い妻」「良い母(仮)」であれない自分、彼女の心の負債は母親の残したものと深く絡み合って、こじれてしまっています。
まともな準備も出来ていない無謀な旅は、その心と体に決着をつけるためだけど、そこでもまた女性であることで危険を感じたり、逆に親切を受けたりしながら、それを越えて自分自身の芯へと降りていく、ただでさえ過酷な旅とその心の経過が重なりあうので、見てるだけで消耗しました。
また、辿り着くまでそこがそうだとわからなかったと語られるゴールと同じく、シェリルの心の救いはわかりやすく見えるものではなかったです。
でも映画が終わったあとのことが少しだけ触れられることで、彼女が自分が生きていくことを受け入れ、束の間、画面に広がる美しいゴールのその先がずっと続いていることがわかるだけで、十分だと思いました。
そういえば音楽がとてもたくさん使われていたんですね(多くの感想で言われてるように「赤い川の谷間」にはたまらず落涙)。
自然の音楽の中にいると、かえって心の中に自分の音楽が鳴り響いたりするのでしょうか。