MasaichiYaguchi

幸せをつかむ歌のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

幸せをつかむ歌(2015年製作の映画)
3.4
主演のメリル・ストリープが、実の娘メイミー・ガマーと初共演したことが話題になっている本作だが、彼女が全編に亘ってU2、ローリング・ストーンズ、ブルース・スプリングスティーン等のロックの名曲を熱唱していて、音楽映画と言って良い内容になっている。
本作では彼女の歌唱をサポートするバンドメンバーとして、そしてパートナーとして、ロックミュージシャンのリック・スプリングフィールドが出演していて燻し銀の魅力を発揮している。
原題は彼女がリードボーカルを務めるバンド名になっていて、彼女の役名Ricki(リッキー)は、このRick Springfield(リック・スプリングフィールド)から来ていると思う。
このようにロックミュージックへの愛に溢れた作品なのだが、中心にあるのは親子のドラマ。
リッキーは家族を捨ててロックミュージックに身を投じた女。
54歳になった今は、アルバイトで生計を立てながら、小さなライブハウスで長年一緒にやってきたバンドと演奏をする日々を送っている。
そんな彼女の元に、娘が離婚して情緒不安定な状態で元夫の所に出戻って来たとの知らせが来たことから、深い溝が出来た親子のドラマが幕を開ける。
メリル・ストリープとメイミー・ガマーは実の親子だから、黙って二人が佇んでいても二人の絆が自然と伝わって来る。
メリル・ストリープは初期の名作「クレイマー・クレイマー」から、自立した女性、志を持った女性役が多く、家族や周囲の者たちとの軋轢に葛藤する演技がとても上手いと思う。
人生に真っ直ぐで不器用なリッキーが、どのようにして溝の出来た元の家族と触れ合っていくのかが、本作の見所の一つだと思う。
そして作品から彼女の演技の素晴らしさだけでなく、その歌唱の素晴らしさが胸に響いて来る。