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幸せをつかむ歌のyfilmholicのレビュー・感想・評価

幸せをつかむ歌(2015年製作の映画)
2.5
2023年6月8日ミッドナイトシアター 録画消化

人生において、忘れたことのない「やりのこしたこと」を回収する家族の映画。

この作品の大きなアイロニー。
平凡な主婦に収まりきらず夢を追って裕福で悠々自適な妻と母親の役目から逃げ出したメリル・ストリープ演じるリッキー(リンダ)は、スーパーで働きながら売れないミュージシャンとして生きていく。

家庭を捨ててリンダの名も捨てリッキーとして生きることを決めた彼女は「さぞかし窮屈な環境から逃げ出したかったのね」とアジア的観点ではそう推測するが、リッキーは背中に大きな星条旗のタトューを背負い保守的な政治的立場があらわれる。
リッキーが捨てた家族は、元夫の後妻はブラックで、息子はゲイのリベラルな環境で暮らす裕福な家庭であり、こういう背景の描き方はとてもアメリカ的でもあり、両者の環境の違いを浮き彫りにして皮肉が協調される。
ブルーススプリングスティーンを愛する保守的な母親が家を出たこと以外はこの家族には大きな問題はなく、とても良く機能し子供たちも産みの母親の存在はほとんど忘れていたに等しいように描かれている。

この映画のあらすじを見ると、まるで母娘関係を描く映画のように語られているけれど、文化的背景の違いとプロモーション的な観点を鑑みたとしても、配給会社は大きな間違いを犯している印象を受けた。それは特にこの邦題によくあらわれている。

あくまでも家族を捨てた主人公が、娘の人生のひとつのつまづきをキッカケに元夫に呼び戻されたことで「やりのこしたこと」を回収し、捨てた家族との距離を縮める物語。
アメリカの文化に理解がない日本人やアジア人には、背景までが伝わりにくい映画かな。

しかしながら、メリル・ストリープはどんな役でもこなしますね。こういう役も良い。
本当の娘さんと母娘役を演じています。
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