mOjako

幸せをつかむ歌のmOjakoのネタバレレビュー・内容・結末

幸せをつかむ歌(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

監督のジョナサン・デミの前回日本公開された「レイチェルの結婚」はとっても良い作品で。一方で脚本のディアブロ・コーディも「juno」「ヤングアダルト」等ジェイソン・ライトマンとのコンビでよく目にする人で考え方に共感出来ることが多いイメージだったので、この2人が組んで主演がメリル・ストリープの時点でまぁ間違いないだろうなぁと。ただ思った以上に優しい味わいの映画で予想に斜め上を行ってくれた嬉しい驚きもありました。

とはいえよく考えるとディアブロ・コーディの作風は今回も一貫しているんですよね。基本女性の痛々しい側面を美人だろうがティーンだろうが年寄だろうが等分に描きつつ、その先にかすかな希望めいたものを提示しているので。
今回メリル・ストリープが演じるのはいい歳して家族を捨ててロックをやり続けている中年女性。メリル・ストリープはニール・ヤングにギター習ったり歌もかなり達者ですごいですね。非常にディアブロ・コーディらしい痛い主人公ですけど、驚いたのは娘役のメイミー・ガマーさんですか。離婚して傷心の娘の所を久しぶりに母が尋ねるんですが娘はノーメイクで髪はボサボサ。正直失礼ながらどこの地獄のミサワかと思ったんですけど、よくよく調べるとこの人れっきとした女優さんでなんとメリル・ストリープの実の娘なんですね。母娘とも良くこんな役受けたなぁってまず感心するんですが、成長しキレイになっていく過程含めて非常にこの2人の関係性は良かったです。
そんな問題を抱えた人たちの殺伐としてるんだけどどこか可笑しい微妙な空気感を演出するジョナサン・デミもさすが。好きなのはやっぱり家族全員揃っての食事シーンのなんともしれん空気。必死に取り繕う親父が最高です。その他育ての親対生みの親対決も見ものでしたし、いつものようにセンス抜群の選曲やキャスティング含めてライブシーンなんかも素晴らしいです。

決定的に好きだなぁと思ったのはやっぱりラストの結婚式。ジョナサン・デミ的には「レイチェルの結婚」に続いてまた結婚式が舞台だし、ディアブロ・コーディ的にはラストに晴れの舞台が来るのは「ヤングアダルト」っぽいのでやっぱり相性がいいんでしょうね。当然の如く息子の為に主人公はライブパフォーマンスをするんですが、客層的にも空気的にもロックは明らかに場違い。それでも自分に出来ることはこれしか無いから歌うってゆうのは紛れもなく母の愛だと思うんですよね。前のシーンでリッキーの恋人であるリック・スプリングフィールドの言葉が良くて、確かに俺たちは家族を裏切ったし嫌われてるけどそれでも一方的に愛し続けるのが親の義務だと。きっと彼女はこの時恥をかいてもいいってゆう気持ちで歌ったと思うんですけど、そこで関係ないやってゆうんじゃなくて恥をかかせないようにダンスしてあげるのもまた家族の愛じゃないですか。そして何より心を閉ざす娘が母の為に立ち上がる場面は母への愛と娘自らの成長が重なってかなり胸を打たれるシーンでした。

まぁ予想外のことは起こらないし予定調和の展開といえばそうだと思いますが、同時に最近あまり見ないタイプの優しい映画なのも間違いなくて。ディアブロ・コーディとうとう丸くなったのかと思うほど。かなり好きな映画でした。
mOjako

mOjako