ヨシイコウタ

キャロルのヨシイコウタのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
4.0
試写会に当たったので昨日観てきました。ちなみに今回、生まれて初めての試写会でした。ちょっと特別な感じがしてよかったです。

この作品に対して、鑑賞するまではなんとなくパンフレットのケイト・ブランシェットに見れるような暖かくて美しい、スロウな物語なのかと思っていましたが、実際にはその想像よりもずっと情熱的な物語でした。

最初に二人が映るシーン、テレーズの右肩に置かれるキャロルの右手が、観客を物語に引き込みます。彼女の早まる鼓動が、自分の胸の中に感じられる。右肩に触れる手がもどかしくてたまらない。絶妙な加減の表現に、いきなり心臓を鷲掴みにされました。
車内の二人を包む空気の表現もとてもよかったです。嬉しくて嬉しくて、話が耳に入らないくらいの陶酔感でいっぱいの車内(こことてもよかったです)が、拳銃みたいに冷たくて寒々しい空気で満ちたりする。優れた表現は、その世界で流れる時間に観客を浸らせます。
キャロルのグラマラスな容姿と振舞いの下で静かに燃える情熱には、境界を超えた普遍的なものを感じました。この普遍的なものに、人々はいつの時代も共感するのでしょう。彼女の指先が、その熱を物語っていました。
そして何と言ってもラスト。物語を観ていってからのこのラストはほんとうに素晴らしい。深く感動しました。

一つひとつ印象深いところを追っているとキリがなくなってしまいます。それほど魅力にあふれた作品でした。
初めて出会ったその瞬間、二人はすでに特別な関係になっていたんじゃないかなと思います。偶然の事象などないとキャロルは言いました。忘れていった手袋に、それを見たような気がします。