グラッデン

キャロルのグラッデンのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
5.0
舞台は1950年代のアメリカ。高級デパートで働く若い女性店員・テレーズ(ルーニー・マーラ)は、店に訪れた中年女性・キャロル(ケイト・ブランシェット)に出会い、恋に落ちていく物語。

様々な点において洗練された作りで見てる側としては終始圧倒されました。

事前情報を得ていたとはいえ、細部にこだわったディティールやカラーチャート等を含めた隙が無い画面設計には唸るしかありません。半世紀以上前の1950年代を舞台にした作品でありながら、現代の雰囲気を微塵に感じさせないくらい、画面に映された風景は完成させていました。

正直、カッコつけて語りたい気持ちはありましたが、持ちうる知識量が到底及ばないレベルに仕上げられてます。とにかく「凄い」の一言に尽きます。

また、昨年見た韓国映画の『私の少女』を見たときにも感じましたが、同性愛に対する認識や批判というのは、それに対する異性(本作であれば男性)の反応というより社会的な理解による部分が大きいのだと感じました。ケイト・ブランシェットが、インタビューで答えていたように、男を悪く描いているのではなく、社会における立ち位置という視点で描いていたのは印象的でした。

純然たるラブストーリーではありますが、少し大枠で見ると、社会の空気感が見えてきますね。

少し余談になりますが、東京芸術センターのアラン・ドロン特集で、 本作の原作者であるパトリシア・ハイスミスの代表作でもある『太陽がいっぱい』を見たことは、『キャロル』に対する理解を深める手助けになりました。

というのも、アラン・ドロン演じる貧しい米国人のトムは、何故、アンドリューになろうとしたのか。私は、金やガールフレンドに限らず、自分には無い何かを求める意識が彼を衝動に駆り立てたのだと思います。本作における、キャロルとテレーズの関係性もまた、双方の過不足を埋め合わせていく意識が情愛に変化したと思います。

最後にルーニー・マーラが直視出来ないレベルに非実在美少女で終盤はクラクラしてきました。最高でした。