クリスマスの物語だが、冒頭から不穏な音楽。
純情そうなテレーズ。デパートで働いているが、本当はカメラマン志望らしい。鉄の意志と言うよりは、この時点ではまだほんのり夢見ているレベルにみえる。作品を人に見せたこともない。
大人しくて、ランチのメニューもなかなか決められない。
娘へのクリスマスのプレゼントを買いに来た、ミステリアスな雰囲気をまとったキャロルという女性。接客したテレーズをランチに誘う。
彼女は離婚前提に夫と別居しているが揉めている。
ゴージャスな外見だが、私生活は不調の様子。
二人はどんどん仲良くなっていくが、運命が、時代が、社会がそれを許さない……。
キャロルは洗練された女性で意志が強く冷静に見えるが、実は率直で感情的な面もある。あまりにも美しいので、他人からは正確に理解されないのかも知れない。
ホテルの部屋には、荒波に揺られる船の絵が掛けられている。
テレーズの自己分析が興味深い。私が自分勝手だった、何も知らずノーと言えない、望みが分からないのにすべてに”イエス”と。
こんな女性は多いと思う。女性に限らないが。
追い詰められたキャロルも後で、自分が分からないといった趣旨のことを言う。
再会したときは、二人とも顔が引きつっているのかはっきり分かる。しかしキャロルはいつからこんな笑顔をしていたのだろう。本当はずっと前から、子供の頃からかも知れない。
始めはキャロルがテレーズに近づいてきた。
最後は。
もう一人の親友アビーはどう思っていたのだろう。半生を過ごした仲。相当複雑だったはず。
劇伴は少し大げさに感じた。確かに運命に翻弄された二人だが、もう少し明るい曲調でも鑑賞後すっきりするのではないか。重みを持たせるのには成功している。
キャロルが非常に美しく、ドレスも、家の内装も最高級。