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ストックホルムでワルツをのぴんじょんのレビュー・感想・評価

ストックホルムでワルツを(2013年製作の映画)
4.0
自国語で表現するということ

スウェーデンのジャズ・シンガー、モニカ・ゼタールンドという女性の伝記。

恥ずかしながら、こんな人はまったく知りませんでした。

スウェーデンの歌手ってんだから、いかに国民的歌手でも、日本人の我々には無縁なのですね。

でも、音楽はよかったです。

一番印象的だったのは、アメリカ進出をしようとしたモニカが「自分の歌を歌え」とエラ・フィッツジェラルドにこき下ろされてから、スウェーデン語でジャズを歌うようになるまでのくだり。

そう、自国語で表現できるようになってこそ、外来文化は自分たちのものになるのです。

言葉がいかに重要なものであるか。

それはちょうどルネッサンスの文芸復興期にダンテがイタリア語で『神曲』を書いたのと同じではなでしょうか。

ラテン語でしか表現できなかった文学が、自国語で表現できるようになった時、文学は大きな可能性を持つようになりました。

それはちょうど、平安朝の日本において、仮名を使って文学表現できるようになった事に似ているのではないでしょうか。

近代で言えば、言文一致運動がそれにあたるのでしょうか。

「真のナショナリズムは、かえって国際的なものになる。」モニカの自国語で歌うジャズの数々はそのことを表しているのではないでしょうか。

モニカの父との葛藤、壮絶な生き方などはほんの付けたりにしか思えませんでした。

2016/7/31 22:45
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