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ストックホルムでワルツをのsayutaishoのレビュー・感想・評価

ストックホルムでワルツを(2013年製作の映画)
3.6
子供が可哀想、モニカはわがまま、自由奔放という感想が散見される。
実際私自身も、この作品で描かれている彼女の生き様に不快感を覚えた部分もある。
ただ、この類の偉人・アーティスト伝記で主人公が男性の場合は、倫理や家庭を顧みない人物はいくらでもいるが、本作に寄せられるような感想が多く出てくることはないと思う。
それは、男性の偉人に子供がいる場合は母親が世話をしていてストーリー上は透明人間になっているからだ。
本作については、そもそも子供の父親はどこへ行った?という視点も持ちたい。
まずはこの点で色々と考えさせられた。

「誰かの真似事ではなく、自分の言葉で表現する」
これを手に入れた時のモニカは水を得た魚のようだった。
だが、ありのままで奔放な自分を大衆へ晒したことによるストレスなのか、アルコールと薬物と孤独に溺れていく。
皮肉なことに孤高を極めた彼女の歌声が、多くの人の心の奥底にある感情を揺さぶったのだろう。

ストーリーは、彼女が求めてやまない「与えられる愛」を中心に描かれていると思う。
それはそれで興味深く感動もしたのだけど、ゴシップ的な要素を強めに感じてしまった。
もう少し彼女の歌や音楽へのこだわり、情熱を深掘りして欲しかった。

ビル・エヴァンス登場(本人ではない)には胸が高鳴る。


モニカ役の女優(エッダ・マグナソン)から放たれる、メラメラと燃えているような、バチバチと放電しているようなオーラが恐ろしく美しい。
素晴らしい演技でした。


私自身も他人の決めた枠からはみ出ている“奔放”さを父親に叱咤されて胸がぐしゃぐしゃになってしまった記憶がある。
そんな経験もあったからか、モニカは衝突しながらも父親のことが大好きなのだなと解釈しながら視聴していた。
そして終盤のシーンで泣いた。

波瀾万丈なモニカ・ゼタールンドの人生。
人生の木を登り切った先に何を見たのだろうか?
最後の彼女の表情は、こちらの想像をかき立てた。
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